高校野球の名門、横浜元監督の渡辺元智氏(75)が23日、徳島・阿南市内の「あななんアリーナ」で催された野球教室(協賛・明和クリーン、BONIQ、’47Brand、ハラダ、こうのINRクリニック)で指導した。

野球教室で中学生に指導する横浜元監督の渡辺元智氏
野球教室で中学生に指導する横浜元監督の渡辺元智氏

徳島東シニアでプレーする中学生に打撃や投球、守備の大切なポイントを伝えた。打撃ではティー打撃で自らトスを上げて球を見極める練習をレクチャー。「これは振らない練習。ボールは振るな。打ちに行って見逃す!」と声を掛け、外角低めスライダーなどを選球する動きを繰り返した。

ブルペンでは投手陣に指導。歩きながら捕手方向に向かって投げる動作を伝え「ウオークする。延長なのよ。ウオーキングピッチングの延長が18・44メートルだよ。(歩いているとき)顔は全然、動いてないでしょう。真っすぐ」とアドバイス。歩く動作は、無理な動きをせずに力も自然な形で伝わっている。左肩の開きが早い右投手などに動きの「からくり」を教えた。

中学生に守備指導する横浜元監督の渡辺元智氏
中学生に守備指導する横浜元監督の渡辺元智氏

横浜での監督時は甲子園に春夏27度出場し、5度の優勝。多くのプロ野球選手を輩出した。「楽しくやらなきゃダメだな。でも練習はつらいぞ。基本的にはできないことを可能にする。それが努力。できるまでやる。でも、なかなか難しいことだよ。ロッテに涌井がいる。スーパースターだった。そこに成瀬(前オリックス)がいた。成瀬は140キロ出ない。130キロちょっと。『プロ行きたい』って。『無理だ』と。でも、なぜプロで成功したと思う? (中学生が『コントロールがいい』と答えると)そう。でも、ただコントロールがいい投手は打たれやすい。フォームがキレイな投手は打たれやすい。成瀬は球を赤ちゃんを抱くようにひゅっと、それからここ(左半身の真裏)に隠す。(球を)上げたときにまた頭で隠す。投げる瞬間にヒュッと出てくるから打者はタイミングを取れない。それを毎日やった。(打者が見やすい体の)後ろにいかないよう」と明かした。

渡辺氏は指導後「野球離れが多くなっています。やるからには彼らのモチベーションが上がって、もっといい選手になってくれたらいい。地方の野球熱も、どんどん高まってくれたらいいかな」と話した。この日は同監督の次女で、管理栄養士の渡辺元美さんも、同チームの保護者に「成長期のスポーツと食事」と題して食育指導を行った。同校の寮母を20年以上務めた経験からレシピなども紹介した。元美さんは「体ができていないとケガをします。運動量に見合ったエネルギーを摂る食事が大切です。キッカケ作りができればいいですね」と話していた。

(2019年11月23日、ニッカンスポーツ・コム掲載)