2019年11月2日。ラグビー界に新たな歴史が刻まれる「特別な日」になるかもしれない。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会決勝でイングランド代表(世界ランキング1位)と対戦する南アフリカ代表(同2位)のフランカー、シヤ・コリシ(28)が、同国初の黒人主将として大仕事に臨む。3度目の優勝を果たして、再び、母国が1つにまとまるきっかけを作ろうとしている。

27日ウェールズ戦後、サポーターにあいさつし、引き揚げる南アフリカ代表コリシ(撮影・狩俣裕三)
27日ウェールズ戦後、サポーターにあいさつし、引き揚げる南アフリカ代表コリシ(撮影・狩俣裕三)

ウェールズとの準決勝。マスコットキッズの手を握ったコリシ主将は、目を閉じ、口を大きく開けて国歌を歌った。国歌は黒人運動で盛んに歌われた「神よ、アフリカに祝福を」(コサ語、ズールー語、ソト語)と旧国歌「南アフリカの叫び声」(アフリカーンス語、英語)を1つに編曲したもので、5つの言語が使われている。過去の民族和解の象徴でもあり、国民約5700万人のさまざまな思いが込められている。94年のアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃から25年が経過した今も、「緩和」は大きな課題とされ、コリシ主将は「僕らが試合する時は、グラウンドで戦う以上の意味を持っている。(愛称)『スプリングボクス』としての役割は大きい」と強調する。

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