ラグビーW杯で日本代表の8強入りに貢献したプロップ稲垣啓太(29=パナソニック)は、オフのひそかな楽しみがある。それは、地元新潟市の老舗喫茶店「サントス」で味わう1杯のコーヒーだ。

ダッシュで汗を流す稲垣(撮影・狩俣裕三)
ダッシュで汗を流す稲垣(撮影・狩俣裕三)

5年以上通い続ける店で、“コーヒー通”の稲垣は必ずスマトラ産の「マンデリン」(530円)を注文する。友人と訪れると、20席ある店内の端に座る。「男は黙ってマンデリン」。これがなぜか口癖で、BGMを耳にしながらゆっくり、じっくりとその時を待つ。高貴なカップに入れられた酸味が少なく、苦みが強いお気に入りの味を口にする。その瞬間が、まさに至福の時なのだ。

体を休めることの大切さ学ぶ

プロ選手として、これまではオフ期間でも毎日、トレーニングに励んできた。ジョセフ体制になってから体を休めることの大切さを学び、「静と動」のメリハリを大事にする。「コーヒータイムはすごく重要。ラグビーから一度スイッチを切ることで、心身ともにリセット出来る」。

創業44年のサントスは、女性店主が1人で切り盛りする。空気を読んだ絶妙な距離感の接客で、居心地も良い。稲垣は過去に近くのカフェで、こわもての風貌を理由に「入店NG」の経験があった。しかし、店主は初来店時に「きっと格闘家の方」と察し、ドンと構えた。ある日、職業を聞くと「ラグビー選手」と知り、その後はテレビなどで活躍をチェックするまでになった。今では「ガッキー」と呼ぶ。1杯のコーヒーが、不思議な縁をつないでいる。【峯岸佑樹】