ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で初の8強を狙う日本代表(世界ランキング8位)は13日夜、横浜・日産スタジアムでスコットランド代表(同9位)と対戦する。

台風19号が接近する中、水しぶきを上げながらダッシュをするリーチら日本代表の選手たち(撮影・狩俣裕三)

1次リーグ最終戦で2戦ぶりにゲーム主将に復帰するフランカーのリーチ・マイケル主将(31=東芝)は、15年W杯で8強入りを阻まれてた因縁の相手との再戦に、気持ちを「鬼」にして臨む。鬼の闘将の強靱(きょうじん)な肉体の源となったのが、札幌山の手高時代から頻繁に通うハンバーグ専門店「びっくりドンキー」のチーズバーグディッシュ400グラムだ。その青春の味には、忘れられない思い出があった。

ニュージーランド出身の少年は15歳で来日し、同校に留学した。177センチ、76キロ。細身の体を見た周囲から「有望選手? 大丈夫か」との声も漏れた。そんな声もリーチの真面目な行動が、解いていった。

毎朝の筋トレや、練習後には約5キロ離れた大倉山まで走って往復した。冬場は、長靴でラグビー場隅にどけられた山盛りの雪山の上り下りを繰り返して足腰を鍛えた。「大好きなラグビーで強くなる」。苦しい時も目を輝かせて、チームが強くなることを最優先に考え、努力を積み重ねてきた。

ラグビー部の佐藤幹夫監督(58)から体を大きくするために「とにかく食べろ」と増量指令が下された。高校近くの「びっくりドンキー」西野店では、チーズバーグディッシュ400グラムと大盛りご飯2セットがお決まり。大好物となった。しかし、高1の花園2回戦で埼玉・正智深谷高に5-89で完敗。トンガ出身で188センチ、108キロの大型WTBクリスチャン・ロアマヌに、100メートル10秒8の快足で大量トライを奪われた。グラウンドで無力だったことを痛感し、食への努力に拍車がかかった。「僕は細くて役立たず。体格の差を感じた。みんなに本当に申し訳ない」。

リーチ・マイケル主将の大好物である「びっくりドンキー」のチーズバーグディッシュ400グラム(アレフ提供)

高2の時には、同じニュージーランド出身で1歳年上のマウ・ジョシュアから「ダメだ、マイケル。もっともっと食べて体を大きくしないと」と助言を受けた。先輩が西野店でレギュラーバーグディッシュ700グラムと大盛りご飯2セットを注文したのを目にし、負けず嫌いなこともあり、「僕も食べます」と豪語して完食した。就寝前には、食パン8枚にバターを塗って胃袋に押し込んだ。日々の努力が実を結び、高3時には188センチ、100キロまで成長した。

「僕は『びっくりドンキー』のハンバーグを食べて大きくなった。いつ食べてもおいしいし、本当に感謝している。『びっくりドンキー』がなければ、ここまでになってなかったかもしれない」 義理堅い性格でもあるリーチは、前大会後の15年11月に西野店を訪れた。スタッフら1人1人に感謝の言葉を伝え、気軽に写真撮影にも応じた。佐藤監督や高校の同期らとともに思い出の味に舌鼓を打った。

リーチ・マイケル主将が高校時代に通ったびっくりドンキー西野店(アレフ提供)

全国展開中の「びっくりドンキー」を運営するアレフは、札幌市に本社を置く。実はその1号店が、リーチが通っていた1980年(昭55)オープンの西野店だった。ハンバーグで使用する牛肉は、ニュージーランド南島の契約生産者から仕入れたもので、箸を使って故郷の味をかみしめながら、北の大地で大きく育った。現在も遠征時の合間などに近くの店舗を探して、1人で足を運ぶほどの大ファンでもある。アレフ広報室の松本総一郎氏は「リーチ選手、日本代表の活躍に我々も大きなエネルギーをもらっています。8強進出の目標を達成して、大会後におなか一杯思い出の味を堪能してほしいです」とエールを送った。

来日して15年が過ぎた。線の細かった少年が、過酷なトレーニングに励んで190センチ、110キロまで進化した。13日には日本代表主将としての誇りを胸に、約1億2700万人の国民の期待を背負って一大決戦に出陣する。「主将は最強じゃないといけない」。悲願のW杯8強へ-。北海道のハンバーグで育った頼れる31歳の闘将が、過去最強の「ONE TEAM」を率いて、日本ラグビー界の新たな歴史を刻む。【峯岸佑樹】

(2019年10月12日、ニッカンスポーツ・コム掲載)