「和」の心で1つになる。ラグビー日本代表は19日、ロシアとの開幕戦を翌日に控え、会場の東京・味の素スタジアムで最終調整した。

フッカー堀江翔太(33=パナソニック)は「日本人でもできると証明したい」と誓った。試合開始4時間前の食事では、選手が希望した「おはぎ」を食べて出陣する予定。チームスローガン「ONE TEAM」の言葉通りに結束し、ロシアをのみ込む。

味の素スタジアムでの前日練習で円陣を組むリーチ(右から3人目)ら日本代表の選手たち(撮影・狩俣裕三)
味の素スタジアムでの前日練習で円陣を組むリーチ(右から3人目)ら日本代表の選手たち(撮影・狩俣裕三)

4万9970人収容のスタジアム中央で、日本代表が輪になった。午前10時すぎに始まった前日練習。誰もいないスタンドに、流の「おーっ」という叫びが響いた。公開された冒頭15分間は全員の息を合わせ、ゆっくりとしたスピードで戦術を確認。3大会連続出場の堀江は「日本人でもできるというのを見せたい。4年間準備してきたことを証明できる」と言い切った。

ちょうど4年前の9月19日、ワールドカップ(W杯)イングランド大会の南アフリカ戦勝利で世界を驚かせた。その前日、主将のリーチがエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチに「どんな練習してるんだ!」と叱られた。堀江は隣で「大丈夫か」と慰めた光景を思い返し「今日は怒られずに済んで『みんなで頑張っていこう』となった」。落ち着いた表情に、仕上がりの自信がにじんだ。

前日練習でスローイングをする堀江(撮影・狩俣裕三)
前日練習でスローイングをする堀江(撮影・狩俣裕三)

初の自国開催。試合約4時間前の食事「マッチミール」にもこだわりがある。都内ホテルに用意されるのは、あんこのおはぎ。今季から選手の要望を受け、エネルギー源となり、腹持ちが良い逸品がビュッフェに並ぶようになった。あんこの材料になる小豆は、邪気を払う縁起物ともされる。

登録31人の半数近くは外国出身選手。結束を深める過程には、おはぎ同様「和」があった。7月には宮崎・日向市で「君が代」の歌詞にあるさざれ石を見学。南アフリカ出身フランカーのラブスカフニも「小さな石が大きな岩になる。この数年間でやってきたこともそう。我々の全てを表す」と感情を込めた。8月28日、W杯メンバーの内部発表。落選した10人はリーチから、自身の名前が刻まれた日本刀の模型を受け取った。刻印はわずか半日で行われ、そこには「ONE TEAM」と記されていた。

日本には簡単に崩れない結束がある。前回大会を知る10人に新たな選手が加わり、目指すは初の8強。堀江は強い口調で「その自信はあります。まず1試合。ロシア戦しか見ていない」と決意を込めた。日本中の声援を力に、歴史を変えるチームとなる。【松本航】

(2019年9月20日、ニッカンスポーツ・コム掲載)