<空手:プレミアリーグ東京大会>◇最終日◇8日◇日本武道館◇女子組手68キロ超級決勝

女子組手68キロ超級で植草歩(27=JAL)が1月のパリ大会以来の優勝を飾った。

同6位のフェラカッティ(イタリア)に5-0で快勝。20年東京オリンピック(五輪)の本番会場・日本武道館で7月のアジア選手権初戦敗退から立ち直り、プレミア通算10勝目を挙げて来年の金メダル獲得をアピールした。同形決勝では世界2位の清水希容(25=ミキハウス)が再演武の末に同1位のサンチェス(スペイン)を破り、2大会ぶりに優勝した。

決勝でポイントを奪い声を上げて気合いを入れる植草(撮影・大野祥一)
決勝でポイントを奪い声を上げて気合いを入れる植草(撮影・大野祥一)

準決勝を突破して涙を流した前日から一転、決勝を制した植草にまぶしいほどの笑顔が広がった。「今日はこれまでできなかったことができた」。世界ランキング1位の実力者が、また1つレベルを上げた。

7月のアジア選手権でまさかの初戦敗退。ショックを振り払うべく、稽古では「とにかく右手(の突き)だけを集中的にやってきた」。その成果はこの決勝でも表れた。開始早々に右の突きで先制点。「あんなに早くポイントが決まって自分でもびっくりしたし、相手も焦っていた」。立ち上がりの有効打で流れをつかむと、その後も着々とポイントを重ね、5-0で快勝。世界トップレベルが集うプレミアリーグで区切りの10勝目を挙げた。日本武道館で、大歓声を受けながら頂点に立ち「(同じ会場の)東京五輪の良い予行演習ができた」と胸を張った。

表彰台で知人を見つけ笑顔がはじける植草(撮影・大野祥一)
表彰台で知人を見つけ笑顔がはじける植草(撮影・大野祥一)

食を通じた肉体改造にも取り組んでいる。今年から母校の帝京大に栄養管理を依頼。昼食と夕食は毎日、全国大学選手権9連覇のラグビー部などを担当する栄養士監修の食事を取る。低カロリー高たんぱくで、鉄分を増量した植草専用メニューで体脂肪が減り、筋肉量も増加。パワーとスピード両面が向上した。

東京五輪の金メダル候補は重圧に押しつぶされることはない。「空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ」とも呼ばれるが、自ら「注目を力にできる選手だと思っている」ときっぱり。自信を取り戻した女王が、本番まで突っ走る。【奥岡幹浩】

東京五輪空手 男女組手5階級を3階級に統合し、合わせて8種目が行われる。出場は1種目10人で計80人。昨年7月から来年3月までの国際大会ポイントによる五輪ランキング、来年5月の予選大会などで出場が決まるが、日本には全種目に1つずつ開催国枠があり、五輪ランキングや予選で条件を満たさなくても出場が可能

(2019年9月8日、ニッカンスポーツ・コム掲載)