<高校野球福岡大会:西日本短大付2-1春日>◇26日◇準々決勝◇久留米

西日本短大付が息詰まる投手戦を制し、準決勝に進出した。プロ注目の最速146キロ右腕、春日の坂元創(3年)と投げ合い、自ら2安打を打ったエース江崎陸(3年)は「坂元とは同じ春日西中出身。クラブチームは違ったけど、一緒に遊んだこともある仲。いい投手から打ててうれしい」と笑顔を見せた。

この日の福岡県は最高気温が35度を超えた。熱中症で倒れる観客もいたほどの酷暑で、足をつりながらプレーをする選手もいた。そんな中、西日本短大付の選手たちは元気だった。近藤大樹主将(3年)は「ウチは今大会、誰も足をつってないんですよ。体重も、逆に太った選手が多くて、僕も3キロ増の73キロになりました」と笑顔で話す。

春日の好投手・坂元を攻略し、接戦を制した西日本短大付。写真は同点ホームを踏んだ高浪
春日の好投手・坂元を攻略し、接戦を制した西日本短大付。写真は同点ホームを踏んだ高浪

西日本短大付では西村慎太郎監督(48)の「強制的にやっても意味がない」の考えから、食事のノルマはない。それなのに、選手たちの太ももはパンパン。スイングの速さや体つきは、県内トップレベルだと言われている。猛暑でもパーフォーマンスが落ちないスタミナも見せた。なぜか? その理由を聞くと3つの答えが返ってきた。

西日本短大付がバテない3つの理由

(1)モグモグタイムの効果

大会中、ベンチ裏で選手たちは頻繁に補食をとっていた。「大会に入って、たくさんの差し入れをいただくようになりました。オレンジジュースやパン、アミノ酸(入り補助食品)など。試合中、ベンチ内でみんなが補食をとって、バテない対策をしています」(近藤主将)。普段口にできない高級な差し入れもあり、応援してくれる人への感謝を感じながら、選手たちは恩返しの気持ちをバットに乗せている。

(2)十分な休養と睡眠

県内の選手も、ほぼ全員寮生活を送っており、通学の時間を休養にあてられることがメリットだ。5回戦(星琳戦)で136球、準々決勝で146球を1人で投げた江崎は「大会中は午前中だけの練習なので、空いた時間は寮の部屋で睡眠をとっています。昼寝と合わせると10時間は寝ている。いくらでも寝られる性格で、体重(76キロ)は全く減ってません」と体力を回復させる「睡眠パワー」に胸を張った。

2試合完投を果たしたエースの江崎。好物は母から送ってもらう「粗びきソーセージ」だ
2試合完投を果たしたエースの江崎。好物は母から送ってもらう「粗びきソーセージ」だ

(3)深夜のご飯と焼き肉の補食

今年の選手は意識が高く「寮の食事だけでは足りない」と自分たちで考え、米を炊いて補食をとっている。185センチ、89キロの3番打者、今村龍之介(3年)は「寮の夕食を食べた後、みんなで自主練をする。そうすると午後11時頃に腹が減るんです。自分たちで買った炊飯ジャーで米を炊いて2合くらい食べています」と、夏でも体重が増えているそうだ。「ホットプレートで焼肉をすることもあり、ご飯がモリモリ進みます。寮生活の楽しみなんです!」。5回戦でダメ押し2ランを逆方向に打つなど、夏もパワーは健在だ。

5回戦で今夏初アーチを打った3番今村。衰え知らずのパワーは夜の補食にある
5回戦で今夏初アーチを打った3番今村。衰え知らずのパワーは夜の補食にある

補食と睡眠の効果でバッティングの調子が上がっている。2試合連続本塁打を含む通算26本塁打を放った180センチの4番神宮(しんぐう)隆太(3年)も、3キロ増の88キロで体調万全だ。

28日の準決勝の相手は東筑。「2年前の準決勝の相手と同じ。今度は勝ちます!」と近藤主将はリベンジを誓った。甲子園出場はこれまで春1回、夏5回。1992年夏の全国制覇を誇る「夏将軍」が、2010年以来の聖地をつかみ取る。【樫本ゆき】