<男子ゴルフ:日本ツアー選手権森ビル杯>◇最終日◇9日◇茨城・宍戸ヒルズCC西コース(7387ヤード、パー71)◇賞金総額1億5000万円(優勝3000万円)
単独首位から出た堀川未来夢(みくむ、26=Wave Energy)が、5バーディー、2ボギーの68で回り通算15アンダーの269で、第1日から1度も首位を譲らず悲願の初優勝を国内3大大会で飾った。同大会での完全優勝は15年の梁津萬(中国)以来4年ぶりで、7月の全英オープン選手権の出場権も手にした。続けて13日開幕の全米オープン(米カリフォルニア州)にも出場。国内メジャータイトルを手に、世界の舞台へと羽ばたく。
最後まで笑顔だった。堀川は2メートルのウイニングパットを決めると、満面の笑みで両手を掲げた。14年にプロに転向し初のタイトル。18番グリーンに上がると選手仲間、関係者、友達の顔が次々と頭に浮かび目頭が熱くなる。それでも自他共に認めるポジティブな男は、涙を見せず、先輩の片山晋呉や大槻智春らからの祝福のウオーターシャワーを浴び、勝利の余韻に浸った。「優勝ってこんなに気持ちいいですね。最高です」と叫んだ。
スコアを2つ伸ばして後半に入った。14番でもバーディーを決め、同組の今平(2位)にこの時点で5打差をつけ、優勝をグッと近づけた。15番パー5で、そのライバルがイーグルを奪いプレッシャーをかけてきたが、負けじとバーディーを奪い追随を封じ込めた。
しのぎを削った今平は同学年のライバル。小学校時代から「天才」と評され、歯が立たなかった。昨年そのライバルが初優勝し、賞金王を手にした。一方で自身は昨年の11月のダンロップ・フェニックス、最終戦の日本シリーズJT杯で、最終日を最終組で迎えながら優勝を逃した。
悔しさを晴らすため、今オフはロングパットの練習、肉体とスイング改造に着手。下半身と体幹を強化し、ぶれぬ体を目指した。プロ転向後、月に20日以上も肉を食べ続けた努力も相成ってパワーアップ。体重も5年間で14キロ増量しておりライバルと対等に戦えるまで階段を駆け上がってきた。「昨年より飛距離は15ヤードは延びている」。
優勝賞金3000万円を手にし、7月の全英オープンの切符も手にした。今日10日には全米オープンに向けて出発。そのメジャー2大会には今平も出場する。「小学校の時から一緒にゴルフをしてきた今平と世界の舞台で戦える。不思議な感覚」と話す。「未来に夢を」と父に名付けられた26歳が、初タイトルを手みやげに夢に描いた世界に挑む。【松末守司】
◆初優勝が初メジャー ツアー制施行後の73年以降、09年の池田勇太が日本プロ選手権で、13年には小平智が日本ツアー選手権で初優勝を遂げたのを始め、堀川を含み、26人目。同大会の優勝者には、5年のシード権が与えられる。
◆堀川未来夢(ほりかわ・みくむ) 1992年(平4)12月16日、神奈川県生まれ。父親の影響で4歳からゴルフを始めた。吉田弓美子らを出した厚木北高から日大に進学。12、13年と国体を連覇。14年アジアアマで2位。14年にプロ転向、18年賞金ランキング19位。176センチ、85キロ。
(2019年6月10日、ニッカンスポーツ・コム掲載)