<プロボクシング:ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)・バンタム級準決勝>◇18日◇英国・グラスゴー・SSEハイドロ

WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が、IBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)を2回1分19秒TKOで下し、決勝進出を決めた。2回だった。井上が開始直後、左でロドリゲスをのけぞらせる。30秒すぎにカウンターの左ショートフックでダウンを奪う。ロドリゲスの顔面には鼻血がべっとりとつく。次は左右のボディーで2度目のダウン。立て続けに左右のワンツーで3度目のダウン。たまらずレフェリーは試合をストップさせた。無敗同士の対決となった大一番で、あらためて井上がその勝負強さを発揮した。

WBSSバンタム級準決勝 井上対ロドリゲス 2回、ロドリゲスに勝利し雄たけびを上げる井上(撮影・滝沢徹郎)

試合後リング上、井上は傷のない顔でインタビューに答えた。

「常に平常心で戦うと思ってイギリスに乗り込んできた。ロドリゲスもプレッシャーをかけてきて1ラウンドでは自分もどうなるかわからなかった。(会場の歓声に)ホーム感を感じて後押しをしてくれた。グラスゴーは思い出深い会場になった」。大歓声が響いた。

試合当日朝、グラスゴーのホテルで初体験のIBFルールの当日計量に臨んだ。増量限度の体重(58キロ)よりも500グラム少ない57・5キロでパス。前夜にはステーキ店に足を運び、パワーを回復した。「コンディションはヤバイですね」と好調を口にした井上は「いつも以上のパワーを発揮できると思います。勝ち方はどうであれ、絶対に勝利をつかみたいと思います」とリングに立っていた。

WBSSバンタム級準決勝 井上対ロドリゲス 1回、ロドリゲス(手前)にパンチを見舞う井上(撮影・滝沢徹郎)

昨年10月、元WBAスーパー王者フアンカルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を日本人世界戦最速タイムとなる70秒KOで撃破した1回戦以来、約7カ月ぶりの世界戦だった。「ゴングが鳴る時、緊張感はマックスになるでしょうけど、それを楽しみながら」。自信を胸にロドリゲスと対峙(たいじ)する瞬間を待ち構えていた。

米やそば持参、父が減量食を調理

試合10日前の8日に英グラスゴーに入った。時差調整、日本よりも寒い気候、異国の環境に順応するための早期の渡英。1週間後には「意外に環境に慣れるのが早くて。時差ぼけも大丈夫」とリラックスした表情を浮かべた。現地調達が難しそうな米やそばなどを持ち込み、宿泊先のキッチンで真吾氏による減量食が用意された。海外マッチは17年9月に米国初上陸して以来2回目。その際、炭水化物摂取が不足し、試合当日のコンディションが整わなかった反省を生かした。

WBSSバンタム級準決勝 井上対ロドリゲス 2回、ロドリゲス(奥)からダウンを奪い拳を突き上げる井上(撮影・滝沢徹郎)

2月中旬、井上は調子を落とし、スパーリングを一時中断する異例の決断を下した。倒す気持ちが前に出過ぎた影響で、真正面から打ち合っていた。本来の高い防御テクニックが消え、気持ちと体のギャップを感じた。パヤノ戦でみせた70秒KO勝ちが国内外に拡散され、周囲の期待感の増幅も肌で感じた。「考えないようにしていても頭のどこかにある。自分にスタイルにちょっと影響していた」(井上)。

約1カ月間、スパーリング中断の代わりに真吾氏とのミット打ち回数を増やした。小学1年から教えてもらった父親のミットで再び本来の動きを思い出した。世界戦の動画もチェックし、頭と体に自らの動きを刻みなおした。3月中旬にはスランプから脱出。「過去最強の相手といっても過言ではないので、精進して臨みたい」。言葉通りに無敗王者同士の対決を制した。日本人で初めてWBA、WBC、IBF、WBO、そして米国で最も権威ある専門誌「ザ・リング」認定ベルトという世界に認められた計5本のベルトを制覇した。

これで5階級制覇王者のWBAスーパー王者ノニト・ドネア(フィリピン)との決勝に決まった。「憧れの選手。ファイナルで戦うことは光栄」。年内に開催予定となる階級最強を決めるトーナメントのファイナル。ついに開幕前から対戦したい相手に指名していたドネアと拳を交えることになる。

(2019年5月19日、ニッカンスポーツ・コム掲載)