今年も数々の野球人が現役を引退した。コーチ、チームスタッフ、野球評論家など、プロ野球に携わる人もいれば、野球界を離れ、新たな分野に挑戦する人もいる。現役引退後に、飲食店の経営や営業に携わる野球人のセカンドキャリアに潜入した。味自慢の店ぞろいです。ランチや忘年会に、いかが?【取材=久保賢吾】

店の前で写真に納まる元西武の小野剛さん(撮影・久保賢吾)
店の前で写真に納まる元西武の小野剛さん(撮影・久保賢吾)

元西武の小野剛さん(40)は、東日本大震災の復興と故郷への恩返しを胸に飲食店4店舗を経営する。昨年12月25日、4店舗目となるとんかつ「勝一」を東京・世田谷区にオープンさせた。自慢の豚は、福島県産の銘柄豚肉「麓山(はやま)高原豚」を使用。良質な脂肪と最高の肉質が売りで、全国各地の豚を食べ比べた小野さんが味にほれ、産地直送で仕入れする。

「震災以降、『豚が売れない』と聞いて。食べたら、すごくおいしかった。『自分が売ります』と言って、店を作ったんです」

「勝一」には福島の復興への思いも込める。投手として、巨人、イタリア、西武でプレー。2006年限りで現役を引退し、ホテル経営などに携わりながら、14年11月にはBCリーグ・福島のGMに就任した。現地で農家や畜産家と交流する中、震災による風評被害を知った。自ら福島米などの安全を旧知の飲食店経営者にPR。賛同した企業とともに「勝一」でも福島米を提供する。

「おいしいのに、食べないのはもったいないです。うちに来て、そのおいしさを知ってもらえれば」

東京・大田区に昨年12月上旬にオープンしたカレー屋「官兵衛」では、故郷の大分・中津市の名物の唐揚げを使った「なかつカレー」を販売する。「野球をやっていて感じたのは、地元や支えてくれる人の存在の大きさ。野球を辞めたら、恩返ししたいなと思った」。小野さんは、自らが描いた夢を実現し続ける。

(2018年11月27日付日刊スポーツ紙面掲載)