全国高校ラグビー大会最多出場(67回)、最多優勝(15回)回数を誇る名門秋田工高ラグビー部は、お母さんの愛情弁当でパワーアップ、1987年度以来の「花園優勝」を目指している。

「目指すところは走るラグビー。パスでつないで最後はぶつかり合う。体が大きくなければ競り勝てません」と伊東監督

お昼になると、選手たちのバッグの中からお母さん手作りの大きなお弁当が2、3個登場。ご飯の上にはたくさんのおかず。もう1つの容器にはおかずがギッシリ。焼き肉、ハンバーグ、スパゲティーにオムライス…。選手たちはおいしそうに、あっという間に残さずたいらげた。

栄養講座で「日本一大きいチーム」に

伊東真吾監督(44)は「ラグビーは心技体の『体』が大事。体が大きい方が圧倒的に有利で、さらに走れる練習すれば勝てる」と話す。近年は全国優勝から遠ざかっている秋田工において、5年前に「古豪復活」を託された。伝統のパワーラグビー継承し「日本一大きいチーム」を目指している。

「そのためには、まずはお母さんたちの意識を変えないと」。就任1年目には、食育の指導に定評のあった女子栄養大の上西一弘教授を招き、年2回、講演を行った。2年目には秋田県教育庁保健体育課の「食で創るスポーツ選手育成事業」の指定校に選ばれ、上西教授に年2回の講演会と保護者を対象とした調理実習も実施した。

上西教授の講習会は年に2度。1週間の食事アンケートをとり、選手1人1人にアドバイスも

その成果は抜群で、選手たちの食事の量は格段に増え、1年間で10キロ、中には3年間で30キロ増えた選手も。昨年度の全国高校ラグビー大会では、平均体重97キロと出場校中ナンバーワン。伊東監督は「ぶつかっても負けなくなりました」とその成果に目を丸くした。

しっかりご飯、肉と野菜も一緒に

上西教授の指導の柱は、ベースとなるエネルギーを作るご飯を食べること。「お肉だけ食べていても筋肉はつきません。炭水化物(糖質)がないとダメ。まずはしっかりご飯を食べる。もちろん選手が好きなお肉はOK。でも、野菜もしっかり摂ってくださいね、と指導します」。

選手も講演会に参加。「選手と保護者が共通認識することが大事」と伊東監督

一般の男子高校生の2倍の摂取量を目安に、1日最低6合のご飯。お弁当は品数を多く、そのうち1品は味の濃いおかずを入れ、ご飯がすすむ工夫をするよう伝えている。

昨年までは調理実習も実施(写真は2年前のもの)

強い体を作るため毎日レバー

上西教授が「指導がうまくいった」とする食材はレバー。独特の食感で嫌いな人も多いが、鉄が豊富で栄養価は高い。調理実習ではレバーを使ったレシピを紹介。「強い体を作るために、レバーは毎日でも食べてほしい」と話した。

調理実習で作ったお弁当の数々

現在117キロのFW金森栄人主将(3年)は、「お弁当には、自分に必要な栄養素を含む食材がたくさん入っている。レバーは小さいころから苦手だったけど、先生の調理実習以降、お母さんのレバー料理がおいしくて、食べられるようになった」と克服。入学時はウエートトレで重量が増えると、貧血に似た症状が出ていた。だが、レバーを摂取してパワーアップ。試合の後半になってもバテない体になった。

全国高校ラグビー大会は67回出場と、花園常連の秋田工

今夏、甲子園では金足農が準優勝を果たし、旋風を起こした。金森主将は「目標は全国制覇」と胸を張る。秋田工ラグビー部は、伝統を引き継ぎ、たくましく進化し続ける。【保坂淑子】

次のページ母の愛情あふれたお弁当を一挙ご紹介