横浜市西区にある「ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル」は、2日からベジタリアン・メニューの販売をホテル内のレストラン、ルームサービス、宴会で始めた。同ホテルによると、「おそらく国内の高級ホテルで最初となる試み」という。パシフィコ横浜(横浜国際平和会議場)も隣接しており、外国人も多く利用する。世界的なスポーツイベントを控え、訪日外国人も増える。食事にこだわる彼らの胃袋を満たす「おもてなし」を、具現化する。

ベジタリアン・メニューを紹介する斉藤悦夫総料理長

 口に運ぶまでは、普通に肉や魚を使った料理と思ってしまう。中華の大豆ミートと根菜の上海黒酢入り甘酢あんソースは、酢豚と食感が大して変わらない。イタリアンの大豆ミートのラグーを詰めた丸茄子のグラタン・ジェノバ風も、ナスの重厚さと柔らかさが足を引き立てる。フレンチの車麩(くるまぶ)のステーキ・トリュフとポテトのムースリーヌも、しっかりした味付けに仕上がっていた。

 それぞれの担当シェフが趣向を凝らしたメニューの数々。先月行われた試食会では、説明を受けるまで、野菜と大豆だけで作ったとは思わなかった。「長年培ったレシピが基盤として残っておりますから、応用は利きます」と、斉藤悦夫総料理長(56)は言う。

試食会では担当シェフがメニューの内容を説明

 1991年(平3)の開業以来、利用者の要望に応じる形で、レストランやルームサービスで料理を提供してきた。国際会議や学会なども多い土地柄。立食形式の宴会では、ベジタリアン・メニューなどのコーナーを設けたこともあった。肉の代用で何を使うなどの資料が代々、引き継がれた。

 国際都市ならではのデータもある。パシフィコ横浜で行われた2000人以上の国際会議で食に関するデータを取ったところ、ベジタリアンが30%、ハラルが15%、グルテンフリーが5%だった。当然、近場で利用する場合も多い。対応を絶えず迫られていた。

 同ホテルの外国人利用客は全体の4割強を占める。「ベジタリアンメニューは、インバウンド(訪日外国人)の増加に比例して、需要の増加が見込める。食の多様化が求められるなか、きちんと商品化して、利便性を増そうと考えた」と本城明総支配人(62)。通常、都内のホテルではベジタリアン・メニューに対し、「リクエストがあれば応じる」という。また、リゾートホテルによっては「普段は特別に対応しているが、繁忙期にはお断りしている」というのが現状だ。

 2019年にはラグビー・ワールドカップ、20年には東京オリンピック・パラリンピックと大規模なスポーツイベントが続く。年間、インバウンドが3000万人の時代。外国人が日本を訪れる機会はさらに増えそう。特別ではなく、常設にしておけば、利用機会も増える。

 民泊なども含め、宿泊施設の競争は激化している。そんな背景もあって、ホテルの付加価値として前面に押し出す。「近い将来、食全体の30%を、ベジタリアン・メニューは占めるのではないか」と、本城総支配人は推測する。主義・主張だけではなく、美容・健康・低カロリーという点からも、日本人女性を新たな対象として売り込めるとみている。

 ◆料金 ディナーコースは、オリエンタル・ビーガンが5940円、オリエンタル・ベジタリアン7722円(税込み)。また、アラカルトとして、ブッフェ・ダイニング「オーシャンテラス」でも提供される。
 ◆問い合わせ 【電話】045・223・2267。

<用語>
 ◆(ラクト・オボ・)ベジタリアン=乳製品と卵を食べる菜食主義者
 ◆ビーガン=完全菜食主義者
 ◆オリエンタル=東アジア中心
 ◆ハラル=イスラム教で、アルコールや豚肉がダメ。豚から抽出したエキスが含まれる調味料、スープ、豚を調理した道具を使うことなどが禁止されている
 ◆グルテンフリー=小麦などグルテンを含む食品を取らない食事法

(2018年7月1日付日刊スポーツ紙面掲載)