高校バスケットボールのウインターカップ全国高校選手権大会(23日開幕、東京体育館、日刊スポーツ新聞社主催)で男子の優勝候補に挙げられているのは、今年の全国高校総体で3年ぶり4度目の優勝を果たした福岡大大濠(福岡)だ。同部では毎日16合の米を炊き、練習の合間や後におにぎりを食べる習慣がある。

インターハイとウインターカップの「夏冬2冠」を狙う福岡大大濠
インターハイとウインターカップの「夏冬2冠」を狙う福岡大大濠

 部の教官室の片隅に置かれた4つのプラスチック製衣装ケースの中には、大量の米が入っていた。「応援してくださる方が、お米を1升送ってくれるんです」と片峯聡太監督(29)が説明する。

 将来有望な選手が集う全国屈指の強豪校、福岡大大濠には190センチを超える長身選手も多く在籍するが、まだまだ体の線は細い。「強い選手を育てたいから」と肉体強化とケアのため、片峯監督の方針で2年前から補食として「おにぎり」が導入された。

 部員33人のうち、親元を離れ寮で暮らす選手は7割以上の24人。「実家ならお母さん方におにぎりや小さなお弁当を用意してもらえるですが、(他の部活生も利用する)寮ではそうもいかないので、部で何とかしようということになりました」(片峯監督)。

この日、おにぎり担当だった1年生。左から大浦禅次郎、渡辺康太、山口航平
この日、おにぎり担当だった1年生。左から大浦禅次郎、渡辺康太、山口航平

 おにぎりを作るのは1年生部員。8合炊きの炊飯器を2つ使い、計16合のご飯を炊く。混ぜ込むふりかけは1日4袋だという。

 ユニークなのはサイズの異なるおにぎりを用意することだ。1口で食べられるごく小さなものを30個、あとは普通のサイズのものを握る。小さなおにぎりは練習中に食べるため。1年生がウオーターボトルとともにおにぎりをのせたトレイを持ち、選手たちが思い思いのタイミングでそれを食べられるようにしている。主将の永野聖汰(3年)は練習が佳境に入り、「エネルギーが足りないな」と思ったときに、食べることが多いという。

練習中、ミニおにぎりを食べる選手たち
練習中、ミニおにぎりを食べる選手たち

寮めし+自分で食材買い足し

 寮では、バランスのとれたおいしい食事が提供されるものの、量は「一般の人とアスリートの中間くらい」(片峯監督)。練習量の多い選手たちには物足りない。そのため、選手はそれぞれ必要な栄養素を補うため、食材を買い足している。

 200センチの井上宗一郎(3年)はラーメン店で10回は替え玉するという大食漢。練習後、ご飯を3杯以上食べないと、すぐに体重が落ちてしまうという。そんな井上がプラスするのは、主に卵。卵かけご飯にしたり目玉焼きを焼いたりして、ご飯を3、4杯食べられるようにしている。入学当初88キロだった体重は、現在101キロ。「100キロ台になった時はうれしかったです」と頬をゆるめた井上。取材当日の昼食は、学食でカツ丼、肉うどん、ご飯というメニューだった。

200センチの大食漢・井上宗一郎(右)
200センチの大食漢・井上宗一郎(右)

 一方、高校生としてただ1人、男子U-19日本代表に選ばれ、7月の「FIBA U19ワールドカップ」に出場した中田嵩基(2年)は自宅通い。代表活動などを通じて栄養指導を受ける機会が多いが、中学時代から体脂肪が多いという課題を持っている。「それがプレーに影響すると感じたので、油ものはなるべく避けます。補食のパンも、カレーパンやマヨネーズが多くのっているようなものは食べず、(脂質の低い)あんパンだけです」。夕食は母に、主菜となるおかずを2品つけてほしいとリクエストしている。

インターハイ王者の自信揺るがず

 ウインターカップでシードの福岡大大濠は25日、日本航空(山梨)と鳥取西(鳥取)の勝者と初戦を戦う。インターハイ勝者ということで、各校からし烈なマークを受けるだろうが、選手たちの自信は揺るがない。永野は「まだチームが成しえたことのない“夏冬2冠”を絶対に取ります」と宣言した。

【青木美帆】