2018年サッカーW杯ロシア大会の組み合わせが決まった。日本は1次リーグH組でコロンビア、セネガル、ポーランドと戦うが、3チームともFIFAランク格上の強豪だ。そこでハリルジャパンよりひと足お先に相手を「食う」べく、日本にある各国料理店に出陣した。われらが和食に負けず劣らず、いずれも強敵だった。

対戦4カ国表
対戦4カ国表

初戦・コロンビアの伝統的スープ

 大事な初戦の相手、南米コロンビアを知ろうと、東京・恵比寿にあるコロンビア料理店「プント・プンタ」を訪れた。その国を知るにはまずは酒(?)だと、仕事中ながら最も一般的という「アグアルディエント」を注文。サトウキビを原料とした蒸留酒をアニス(香草)で香り付けしてある。アルコール度数は29度。

 0~11歳まで同国とベネズエラで過ごしたコロンビア国籍の店主小泉明さん(38)は「あっちではサルサを踊る前にみんな生(き)で飲みます。酒は日本人より全然強いですよ」と、どや顔で笑った。

 続いて一般的な料理を注文。伝統的スープ「サンコーチョ」は鶏肉、トウモロコシ、甘くないバナナ、キャッサバ(イモの一種)とパクチーが入った「ポトフ」のような味。ギョーザのような「エンパナーダ」は、トウモロコシが原料の分厚い皮でひき肉を包んでいた。小泉さんは「和食と違い全体的に種類は少ない」と話すが、どちらもラテン系の野性的な味で、パワーがつきそうだ。

コロンビアの伝統的スープ「サンコーチョ」
コロンビアの伝統的スープ「サンコーチョ」

 コロンビア人の母親を持つ小泉さん。前回ブラジル大会で対戦した際は下馬評が高かった日本を応援したというが、今回は「コロンビアを応援します」と既に心に決めていた。

2戦目・セネガルの「チェブジェン」

 2戦目のアフリカ・セネガルを味わえるのは東京・浜松町の西アフリカ料理店「カラバッシュ」だ。熊沢房弘オーナー(71)は「セネガル料理は西アフリカで一番おいしいと言ってもいいぐらい」と話した。

 代表的な料理「チェブジェン」はトマトベースのライスの上に、真鯛の切り身がドンッと乗ったパエリアに似た一品。日本人の口にも合う味付けだった。地元のビール「ガゼル」も日本のものと変わらぬ味で、飲みやすい。

セネガルのパエリアと言われる「チェブジェン」
セネガルのパエリアと言われる「チェブジェン」

 同国はフランス領だったため、ビールなどのライセンスはフランスが持っているものが多いが、「ガゼル」は例外で、熊沢さんも手に入るという。パスタやパンも多く食べ「フランスの影響が大きい」と語った。

セネガルのパエリアと言われる料理「チェブジェン」を食らう日刊スポーツ記者
セネガルのパエリアと言われる料理「チェブジェン」を食らう日刊スポーツ記者

 大西洋に面しており、海辺では魚料理が多く、内陸部では鶏、ヤギや羊が多く食べられる。国土の一部がサハラ砂漠にあるために「牛、豚を放牧して育てるのは気候的に難しい」という。さまざまな文化、気候条件が混じり合い、料理にも多様性、順応性が垣間見えた。

3戦目・ポーランドのジャガイモステーキ

 最後は宇都宮市のポーランドカフェレストラン「スモックバベルスキ」(バベルの城の竜の意味)。日本唯一といわれるポーランド料理の専門店だ。店主堀越アグニェシュカさん(38)は、日本と母国ポーランドの対戦を「(両国とも)ベストの状態で戦えるといいね」と楽しみにしている。

 13年に夫の堀越寿弥さん(48)と開店した店は、駐日本ポーランド大使館でも提供されており、大使が「日本唯一の正統なポーランド文化、料理を伝える店」と太鼓判を押す。100年もののアンティークミラーや岩塩の内壁など、内装もポーランド文化満載だ。

 人気メニューはジャガイモのステーキに肉ゴロゴロのビーフシチューがかかった「プラツキ」。そばの実とポルチーニのリゾット「カシャット」も定番だ。キャベツの酢漬けと肉を煮込んだ「ビゴス」は切り干し大根の煮物に似た味わい。果物や野菜がふんだんに使われ、量を食べても、もたれない。

ポーランドカフェレストラン「スモックバベルスキ」堀越アグニェシュカさん
ポーランドカフェレストラン「スモックバベルスキ」堀越アグニェシュカさん

 ポーランド産ウオッカ「ズブロッカ」(40度)や、ウオッカにラズベリーやブルーベリーなどを漬けた果実酒「ナレフキ」(20度)をなめながら、日本の倍ほどの量の食事を2時間かけて食べ、十分な睡眠を取るのがポーランド流。日本代表の強敵となりそうだ。

 いずれも優劣つけがたい味だったが、日本だって世界に誇る和食と日本酒がある。H組4チームとも母国料理をしっかり食べ、いい戦いをしてほしいものだ。ごちそうさまでした。【清水優、三須一紀】

和食は世界遺産

 対する和食は13年12月、ユネスコの世界無形文化遺産に「和食・日本人の伝統的な食文化」として、登録されている。伝統芸能、祭り、工芸技術など、その国の歴史、文化、生活習慣に深く結びついた無形の文化遺産の保護のため、ユネスコが始めた同事業で、食が登録されたのは「フランスの美食術」「メキシコの伝統料理」「地中海料理」(10年)、「トルコのケシケキ」(11年)に続いて5番目。東アジアでは初めてだった。

(2017年12月3日付日刊スポーツ紙面掲載)