サッカーJ2、東京VのMF井上潮音(20)は、昨年トップチームに昇格した若手有望株だ。2014年にはU-17日本代表にも選出された167センチの逸材。プロでの活躍も期待されているが、ケガがちなのが悩みだ。

 ケガに強い体作りを目指し、今年からトレーナー陣と食事内容から細かくチェックするようになった。2月にアレルギーの血液検査を受けたところ、小麦と砂糖(さとうきび)にアレルギー反応が出た。「これまで普通に食べていたので、驚きました」。

小麦、砂糖にアレルギー反応

 そこから母佳子さん(45)の協力をあおぎ、小麦粉を一切抜く食生活を始めた。いわゆる「グルテンフリー」だ。

ケガに強い体作りを目指し、食生活も意識している東京VのMF井上潮音
ケガに強い体作りを目指し、食生活も意識している東京VのMF井上潮音

 井上は6人姉弟の2番目。現在は高校生と中学生の弟3人と母との5人で、実家で暮らす。女手一つで子どもを育てる佳子さんは、成分を調べて調味料を買い替え、井上専用の食事を用意した。砂糖も、さとうきびを使わないてん菜糖などを調達。「母がすごく協力的だった。感謝しています」。井上も好きな甘いものを控え、外食もとらないようにした。

 しかし、ケガは減らなかった。食事改革を始めた2月から開幕5試合に出場も、3月に左太ももを負傷。6月に復帰して2試合に出場したが、再び同じ個所を傷め、3カ月以上も離脱した。

 グルテン抜きしてから半年を過ぎた頃、井上は決断した。「確かに、同じような食生活をすることで体脂肪が減って走れるようになった先輩もいるけど、自分は変化を感じにくかった。食事をコントロールする成果は個人差もあるかもしれない。色々なアプローチを試してみよう」。

グルテンフリーからバランス重視へ

 9月に入り、食事スタイルを軌道修正、グルテンフリーをやめた。食事への意識は高いままだが、特定の食品を抜くのではなく、全体的にバランス重視の食事へとシフトした。

*<井上が現在、特に意識していること>
・気にする栄養素はタンパク質とビタミンC
・豆腐と納豆、肉類は毎日食べる
・魚を2日に1回は食べる
・オレンジやキウイなど酸っぱいフルーツを摂る
・米は茶碗1杯で野菜の種類をたくさん。特にブロッコリーは食べている*

 新スタイルになってから1カ月半。これが自分に合っているのか、まだ分からない。ただ、ケガの回復状況は良く、21日の岐阜戦で途中出場し、久しぶりにピッチに立って、プレーできる喜びをかみしめた。

 チームは26日時点で5位。今季は残り4試合で、28日は2位福岡との大一番に臨む。6位までが出場できる昇格プレーオフ争いの渦中にあるが、勝てば自動昇格も視野に入る。「チームのみんながここまで頑張ってくれたので、ラストスパートで力になりたい」と力強い。

「イケメンJリーガー選手権」で2年連続9位と人気の高い東京VのMF井上潮音
「イケメンJリーガー選手権」で2年連続9位と人気の高い東京VのMF井上潮音

Jイケメンランク2年連続9位

 Jリーグの協力で毎年実施される「イケメンJリーガー選手権」では2年連続9位。「自分はサッカー選手なので、ケガをしているのに、そこで注目されても喜べない。プレーを見てもらいたい」。シーズン終盤、井上は華麗なプレーで“魅せる”気十分だ。

井上潮音(いのうえ・しおん)

1997年8月3日、神奈川県出身。東京Vジュニア-東京Vジュニアユース-東京Vユース。昨年からプロ。14年にU-17日本代表として2大会に出場。年齢的にも狙える東京五輪出場が目標。167センチ、60キロ。O型。