巨人阿部慎之助内野手(38)の2000安打を支えた原点の1つを味わってきた。

巨人阿部慎之助は2000本安打を達成し、会見でボードを手に笑顔を見せる(2017年8月13日撮影)
巨人阿部慎之助は2000本安打を達成し、会見でボードを手に笑顔を見せる(2017年8月13日撮影)

 巨人が敵地広島に乗り込んだ12日の昼飯時。担当記者3人で、広島市内のラーメン店「陽気 横川店」を訪れた。赤色ののれんをくぐり、テーブル席に腰掛けると、水置きに接したカウンターの末席が目に飛び込んできた。この丸椅子を、店主らは「アベノボックス」と呼び16年前を懐かしむ。新人時代の阿部がいつも座っていた席だという。

 当時の広島戦では、若手組は朝10時から敵地の室内を借りての特打が日課だった。1軍打撃コーチだった内田2軍監督のもと、高橋監督らと1時間半以上打ち込んでから、ナイターが待つ広島市民球場へと向かった。その道中でいつも、内田2軍監督が名物の中華そばをごちそうしてくれた。朝も夜もバットを振り続けた両手で箸とどんぶりをつかみ、腹ぺこの体に細めのストレート麺をかきこんだ。阿部は「あのラーメンの味は一生忘れられない」と今も思い出すという。最年少としていつも末席に座り、コップに水を酌んでは先輩に配った。その姿を皆が覚えていた。

 内田2軍監督は回顧する。「今でも店にいくと、おやじさんが『この席に阿部さんが座って、みんなに水を配ってましたね』って言うんだよ。俺は、若手には、うまいラーメンが食べたかったら朝練に出てこいって言ってたの。懐かしいなあ」。翌日の13日、阿部は9回の最終打席で球団の生え抜き5人目の2000安打を達成した。広島での大台到達は、新人時代からの縁だったのかもしれない。【巨人担当 松本岳志】

(2017年8月19日、ニッカンスポーツ・コム掲載)