【ブダペスト23日=益田一弘】1日3食を疑え。競泳男子400メートル個人メドレーの瀬戸大也(23=ANA)が、競泳世界選手権の同種目3連覇に向けて出陣する。タフな大会を戦い抜くために栄養面を「味の素ビクトリープロジェクト」が徹底サポート。レース当日の食事は1日3食の常識を覆して、計算された補食で支えられている。今大会のデータは今後に生かされる。今日24日で開幕まであと3年に迫った東京五輪に向けて、すでに戦いは始まっている。

世界選手権男子400メートル個人メドレーで3連覇を狙う瀬戸大也
世界選手権男子400メートル個人メドレーで3連覇を狙う瀬戸大也

1日4000Kcalで複数レース

 3食で56%、補食12回で44%。瀬戸は日本選手権第3日の4月15日、計15回の栄養補給で約4000キロカロリー(成人男性の2倍)を摂取した。摂取したエネルギーの内訳は3食と、ゼリー飲料、栄養補助食品「アミノバイタル」など補食が半々。レースの合間には常に何かを口にした。この日は200メートルのバタフライ2本と個人メドレー決勝の正念場。常識を覆す1日15回の栄養補給で乗り越えて「エネルギー切れを起こさなかった」と胸を張った。

 選手の栄養をサポートする「味の素」ビクトリープロジェクト。同社の栗原氏によれば、従来の大会中の食事サポートから踏み込んで現在は「勝つためのレース当日の食事」が焦点だ。

量とタイミングを徹底計算

 1日計15回。ヒントはリオ五輪だった。第1日に400メートル個人メドレーで萩野が金メダル。当日深夜に弁当2個を食べて体重をキープしたが、一気に食べると体がエネルギーを吸収しきれない。一方で「米国はプールサイドで果物など、いつも何か食べていた」と栗原氏。日本では「行儀が悪い」となるが、複数レースをこなす上で理にかなっていた。食べる量とタイミングを考えた結果が1日3食の常識を疑うことだった。

瀬戸の4月15日午前の捕食表。味の素栗原氏が手書きで作製。四角で囲まれた部分が補食の量とタイミング(味の素提供)
瀬戸の4月15日午前の捕食表。味の素栗原氏が手書きで作製。四角で囲まれた部分が補食の量とタイミング(味の素提供)

瀬戸の4月15日午後の補食表(味の素提供)
瀬戸の4月15日午後の補食表(味の素提供)

400個メで3連覇狙う

 瀬戸は今月上旬、フランス合宿で腹痛を起こしたが、同時期に合宿入りした栗原氏のサポートを受け回復した。「3連覇は誰しもが狙える立場にはいない。誇りを持ってやる。今回もエネルギー摂取を大切にやっていきたい」と瀬戸。3連覇をかけた400メートル個人メドレーは最終日の30日だ。

 もちろん今大会のデータも蓄積される。「味の素」がサポートする体操、バドミントンなど他競技に還元される可能性もある。貴重なデータは、開幕まであと3年に迫った20年東京五輪で日本の活躍を支えるベースになる。

瀬戸の世界選手権
 13年バルセロナ大会で初出場。400メートル個人メドレーでライバル萩野との対決を制して4分8秒69で日本人初優勝。15年カザニ大会では萩野がけがで欠場する中、4分8秒50で制した。世界選手権で日本人として初の連覇を達成して、翌年のリオ五輪代表に内定した。今大会は25日に200メートルバタフライ、26日に200メートル個人メドレー、30日に400メートル個人メドレーに出場する。

フランス合宿で「味の素」のサポートを受ける瀬戸(右)はチゲスープを、入江はたまごスープに舌鼓をうった(味の素提供)
フランス合宿で「味の素」のサポートを受ける瀬戸(右)はチゲスープを、入江はたまごスープに舌鼓をうった(味の素提供)

味の素ビクトリープロジェクト
 03年から日本オリンピック委員会と共同で、日本選手団の食と栄養面の支援プロジェクトを立ち上げた。10年からは都内の味の素ナショナルトレーニングセンター内に栄養管理食堂「勝ち飯食堂」を開き、バランスの良い食事を提供。体操、フィギュアスケート、バドミントンでも選手に個別指導を行っている。

(2017年7月24日付日刊スポーツ紙面掲載)