埼玉県狭山市にある進学校、西武学園文理の野球部は大学と連携し、データを元に身体作りを行っている。

5月7日、東京・郁文館高校と練習試合を行った
5月7日、東京・郁文館高校と練習試合を行った

結果が数値化され、目標が明確に

 2009年から、数々のスポーツチームをサポートする女子栄養大栄養生理学研究室と連携。月に1度、専用機器で体組成を測定し、各選手ごとの結果表としてフィードバックされる。

InBodyによる体組成測定の様子
InBodyによる体組成測定の様子

 選手は、身長マイナス100を目標体重としてその月の目標を決め、日々に落とし込んで食生活の取り組みを進める。数値はごまかしがきかないため、努力したかどうかは一目瞭然だ。

女子栄養大のスタッフは、日頃の食物摂取頻度についてもヒアリングする
女子栄養大のスタッフは、日頃の食物摂取頻度についてもヒアリングする

1キロ弁当を食事担当がチェック

 チームでは選手ひとりひとりに役割を与え、責任を持って取り組ませていることも特色のひとつだ。食事面の担当者は浅見雄也選手(3年)。オフシーズンには昼の弁当を、容器を除き、ご飯とおかずで重さ1キロ以上とする「1キロ弁当」運動を行ったが、その際は、量が足りているか、きちんと食べているかなどを部員のクラスを回って確認、声がけをした。

 家での食事は、家族の協力を得て10センチスケールとともに写真を撮影。大学に送り、量や内容についてアドバイスをもらう。

 朝練とウエートトレーニングの後には、マネジャーがおにぎりを用意。筋修復のゴールデンタイムを意識して、部員70人分を用意する。味つけはふりかけやめんつゆなど工夫している。

部員を支える6人のマネジャー
部員を支える6人のマネジャー

女子栄養大と連携7年目

 食生活の取り組みを始めたきっかけは、09年秋の県大会でサヨナラ負けを喫したことだった。佐藤圭一部長は「相手校の打球はなぜあんなに強いのか」と考え、体格の差に気付いた。打球の伸びとスタミナ持続のため、食生活の見直しからの肉体改造が必要なのでは? と教え子のつてをたどって女子栄養大との連携が始まり、7年目となる。

 浅見選手も入部当初かなり細身だったというが、15キロ増に成功した。しかし、小食の選手にとって理想の食事量をとることはかなりつらい。浅見選手も一時、炊飯器で炊いたご飯が食べられなくなってしまった。そのときは母親に2合炊きの釜を用意してもらったことで、またご飯を食べることができるようになったという。「自分も体が大きくなり、パワーがついたと思う。頑張っていても思うような結果が出ないと悔しいが、あきらめずに声をかけていきたい」(浅見選手)。

食事担当の浅見雄也選手(左・3年)と佐藤圭一部長
食事担当の浅見雄也選手(左・3年)と佐藤圭一部長

家族にも食育、試食も

 全員が自宅通学のため、食生活の取り組みに家族の協力は欠かせない。家族の理解度を高めるため、栄養に関する講演を行ったり、夏の県大会前の壮行会では、部員とその家族に「高校生の野球部員に望ましい食事」を試食してもらっている。

昨年の壮行会の様子(佐藤部長提供)
昨年の壮行会の様子(佐藤部長提供)

 宮本駿投手(3年)の母真佐美さんは、毎日補食も含め1.2~1.5キロにもなるお弁当を作り続ける。お弁当箱に詰めたもののほか、サンドイッチ、おにぎり、フルーツなどを持たせ、入部してからのお弁当を撮影して残しているという。「入部したころは65キロだった体重が今では78キロになり、力強い球を投げられるようになりました。最初は2合のご飯を食べるのに苦労していましたが、今では残さず食べてくれますね。最近はケガをしたこともあり、鶏肉や骨ごと食べられる魚を入れるようにしています」(真佐美さん)。

家庭での食事をサポートする3年生保護者のみなさん。左から渡辺さん、中込さん、谷川さん、猪八重さん、伊藤さん、宮本さん
家庭での食事をサポートする3年生保護者のみなさん。左から渡辺さん、中込さん、谷川さん、猪八重さん、伊藤さん、宮本さん

 刀川正明監督は「結果が数値として出ることで、一人一人の意識が変わってきたと思う。勝ち星を挙げるためには野球の技術向上も必要だが、他校の選手と自分を比べたときに頑張ってきたことを自信につなげてほしい」と話す。

最後の甲子園に挑戦する3年生部員と刀川正明監督(左)
最後の甲子園に挑戦する3年生部員と刀川正明監督(左)

 2015年夏と16年春は県大会ベスト8に進出したが、今年の春季大会は西部地区予選で敗退。創部36年目にして初の甲子園出場へ、7月に行われる夏の県大会に向け、追い込みにかかる。

西武学園文理高校硬式野球部

学校創立の1981年に創部。部員70人(3年=18人、2年=29人、1年=17人、女子マネ=6人)。2015年夏、16年春には県大会ベスト8。生徒数1546人。活動の柱は「野球を通じた人間的成長」。刀川正明監督、佐藤圭一部長、金井塚成孝顧問、栗原圭佑顧問。