科学と食を組み合わせて食育活動する若手社会人と学生によるボランティア団体がある。キッチンの科学プロジェクト、略して「KKP」だ。代表は金子浩子さん(27)で、中学、高校の理科の教員免許を持つ社会人。元々食べることが好きで、大学院在籍時の2013年、管理栄養士の仲間らと団体を立ち上げた。

 「今は、子どもたちの理科離れが叫ばれ、朝食を欠食するなど食の問題もあります。大人の私たちでさえ、科学的に判断するメディアリテラシーが不足しているため、氾濫する食の情報に振り回されることもあります。なるべく小さいうちに食事を楽しむことを覚えて、科学を学ぶきっかけになってくれれば」と、金子さんは子ども向け科学実験・料理教室を中心に活動。年々、その幅は広がっている。

全国各地で子ども向け化学実験・料理教室を行う金子浩子さん(右)

 5年目となる現在は栄養、理学、農学、医薬看護らの学生が在籍し、年間30回ほどワークショップや講演を行う。金子さんは休日をKKPの活動にあてて、日本全国奔走している。

野菜でカラフル和菓子作り

 埼玉県のとある場所で、ワークショップが行われると聞いて、取材に出向いた。テーマは「野菜でカラフル和菓子作り」。小学生を中心に子ども20人と、その保護者が参加していた。

白玉粉にムラサキイモペーストをまぜたものにレモン汁を加えるとピンクに(左)、重曹水を加えると青紫(右)に変わる

 色のベースとなるのはムラサキイモ。これに、酸性のレモン汁を混ぜるとピンク色(赤系)、アルカリ性の重曹を混ぜると青紫(青系)に変化する。まずは色の変化を見せて、子どもたちの関心を一気につかむ。

子どもたちは火を使い、練りきりあんを作る。結構な力が必要

 その後は調理実習。火を使い、力仕事をしながら、求肥(ぎゅうひ)、練りきりあんを作り、それにあんこを詰めて、好きな形の和菓子に仕上げさせる。金子さん含め、8人のスタッフが子どもたちをリード。子どもたちの創造力が膨らみ、予想もつかない“作品”が次々と生まれた。

子どもたちが作った和菓子。面白いものがたくさん。記者も作ってみました(下)が、発想力不足を痛感

 その後は、科学の説明だ。ムラサキイモにはポリフェノール類のアントシアニンが含まれていること、そのアントシアニンは抗酸化力が非常に強いこと、人間の体も酸化する、さびるということを語りかける。

 また、ムラサキイモとベニイモの比較から品種改良についての話、色と栄養、色と美味しさなど話題は多岐に広がったが、巧みな話術と演出で、子どもたちを引き込んでいった。大人にも興味深い話ばかりで、必死にメモをとる保護者もいた。

子どもと一緒に取り組むKKPのメンバー。科学実験なので白衣を着る

 最後はつぶあんとこしあんの違いから、「味わうことは噛むことから始まる。噛むことは、脳や胃を満足させる。食べるものを、しっかり噛める物にしよう」とメッセージ。2時間はあっという間だった。

生きるために必要なこと

 スポーツ栄養も、まずは食事を楽しむことからスタートする。「体にいいから食べなさい」「大きくなるために食べなさい」と強要されても、食べる楽しみ、喜びを知らなければ、子どもは自分から取り組まない。KKPの取り組みは、「栄養」に至る前の活動で、生きるために必要なことを教えていると言っても、過言ではない。

KKPのメンバー。前列右が金子さん

 金子さんはかつて摂食障害に悩み、拒食と過食を繰り返した。「私自身も、食育を通して子どもたちから気付きをもらい、また自分で調べて…と楽しく、心が豊かになります。ぜひ科学の好奇心を使い、小さい時期に食事の楽しさを知って欲しい」と力を込める。

 最近は、PTAなどの保護者のグループや、大人の食育教室からの依頼も増えてきた。「食育に関してさまざまなアプローチがあり、科学を通しての食育は全国的に始まったばかり。反響がある限り、やり続けたい」。金子さんは、どこまでも意欲的だった。

※アスレシピは、KKPによるコラムを「ママ特派員・サポーターから」の中で掲載していきます。月1回更新予定です。