桐光学園(神奈川)バスケットボール部の田代幹主将(3年)には苦い思い出がある。スタメンとして出場した昨年、高校2年時のウインターカップ県予選準決勝。延長戦にもつれこんだ試合の終盤で足をつり、チームの敗戦をコートの脇で見つめることしかできなかった。「足をつったのは準備が足りなかったから。試合前で勝負が決まっている」。そう感じた田代は意識改革を断行した。食事の見直しもその1つだ。

ドリブルでボールを運ぶ桐光学園田代幹主将

 田代はとにかく食が細い。「食べることがあまり好きではない」と言い、夕飯に脂っこいものを食べると翌朝は喉元までもたれを感じ、オフの日にはほとんど何も口にしないこともある。母美子さんは「試験休みで部活がないときはすぐに体重が減っちゃって、ピークを維持するのが大変。食べるのも遅いし、アスリートらしからぬ子です」と苦笑する。

 かくして、母子二人三脚の奮闘が始まった。朝食は果物や味噌汁、シリアルなど軽くて食べやすいものを提供。インターハイ予選が行われた6月ごろは、2リットルのお弁当に加えておにぎり4つ、魔法瓶に入れた汁物、ピラフや焼きそばなど、小さい保存容器を持たせた。

 「(タンパク質の豊富な)鶏肉を多めにしたり、魚とお肉を両方出してみたり、具だくさんの汁物にしたり…。揚げ物はなるべく避けて、冷蔵庫には必ず牛乳、卵、100パーセントジュース、納豆、豆腐を入れておくようになりました」(美子さん)。

 息子も、なんとか食べた。一度に量が食べられないので朝練前、授業間、部活前、部活後など小分けにし、オフの日もきちんと食事をとるようになった。「食べたくないのに必死で頑張っているんだろうな、という感じはしました」(美子さん)。練習を終えて帰宅すると必ず2キロは減っていた体重があまり減らなくなり、体重自体も3キロほど増えた。「ドライブでディフェンスにぶつかってもシュートまで持っていけるようになりました」(田代)。

 5人兄弟の四男坊。息子は「自分ではめっちゃ燃えているつもりだけど、『やる気ないオーラが出てる』とか『眠そうな顔をしている』って言われるんです」と言い、母は「あれこれしゃべらないし、兄弟で一番わかりにくい性格」と説明する。一般にイメージするキャプテン像からはかけ離れたキャラクターだが、食事の改善も含め、人目につかない場所でこつこつと努力を重ねてきた。試合中のフォローも含め、下級生の面倒もよく見た。

 上位進出を狙った今月のウインターカップ全国高校選抜優勝大会で、まさかの初戦敗退。ビッグプレーが出たときのパフォーマンスも、下校中に想像せずにはいられなかった好プレーも何1つ発揮できないまま東京体育館を去った。「何もやっていないような感じで終わってしまった。これが実力なのかもしれないけれど、すごく悔しいです」(田代)。

 大学では親元を離れて競技を続ける。寮で食事が提供されると聞いているが、自らの体を作るのはあくまでも自分自身。残り少ない実家暮らしの中で母の知恵を吸収することから、新たなステージに向けた1歩目が始まる。【青木美帆】