アメリカでは今、次世代栄養食品として「コオロギ」がクローズアップされています。スポーツ選手やハリウッドセレブの間では、コオロギの粉末を使った健康食品、タンパク質を摂取できるプロテインバーが人気。昆虫食への期待も高まり、ベンチャー投資家も注目しています。確かに、日本でもイナゴや蜂の子を食べる地域や習慣はありますが、コオロギをはじめとする昆虫が、人間の健康を担う日が来るのでしょうか? ロサンゼルス在住の千歳香奈子通信員がレポートしました。

さまざまな味で一般人も手軽に

 ハリウッドセレブ御用達の高級食材を扱うスーパーに並ぶのは、コオロギの粉末を使用した2種類のプロテインバー「exo bars」と「Chapul」。どちらもCricket(コオロギ)プロテインバーと明記されており、値段は54グラムのバー1本が3ドル50セント(約403円)。チョコレートやピーナッツバター、コーヒーやココナッツ味などさまざまなフレーバーがあり、exoには抹茶味もある。

コオロギの粉末を使用したプロテインバー。いろいろな種類が出回っている
コオロギの粉末を使用したプロテインバー。いろいろな種類が出回っている

 プロテインバーといっても、アメリカではスポーツ選手だけでなく、一般人もスナックとして気軽に食べている。スーパーではいろいろな種類が売られており、今年に入ってからはクリケットバーを取り扱う店舗が増えている。

 Chapulはプロテインバーだけでなく、コオロギをオーブンでローストして粉末状にしたパウダーも販売。シリアルやヨーグルトと混ぜて朝食にしたり、飲み物に溶かして飲んだりできるものだ。

1本あたり25匹、完ぺきなタンパク質

 世界中のIT企業が集まるカリフォルニア州のシリコンバレーで火が付き、美容や健康に敏感なセレブたちが住むハリウッドでも人気となり、テレビや雑誌でも取り上げられている。

 「完ぺきなタンパク質」とメンズ・ヘルス誌が伝えるなど、その栄養価の高さが注目の秘訣。クリケットバーは、1本あたり25匹のコオロギを使用し、10グラムのタンパク質を摂取できるという。牛や豚肉など他のオーガニック食肉と同様に、9種類の必須アミノ酸が含まれており、牛肉の2倍のタンパク質、ホウレン草よりも15%多く鉄分を含み、サーモンよりビタミンB12が豊富で、栄養食品として非常に優れていると言われている。

 また、原料に大豆や乳製品、穀物などを使っていないので、それらのアレルギーのある人でも食べることができる。健康志向の高い人たちの間では、小腹が空いた時のおやつ代わりや朝食に、スポーツ選手にはトレーニング後の栄養補給として利用されている。コオロギが原材料であるという心理的障害さえ克服すれば、普通のプロテインバーと味も食感も変わらない。

お菓子、ヘルシースナックも登場

 このブームを受け、アメリカではコオロギの養殖農場や原料メーカーが次々と誕生。コオロギの粉末を使った本物のチョコレートのようなお菓子まで登場している。

 「Seek」がネットで販売しているのは、ハチミツやココナッツパウダー、デイツやウォルナッツなどヘルシーな自然素材と組み合わせたスナック。同社HPによると、世界80%の国で昆虫を食べる習慣があり、アメリカでもネイティブアメリカンが良質なタンパク質の供給源として伝統的に食してきたものだと説明。また食肉と比べると飼育に必要なエネルギー消費が少ないことから、エコロジーでもあるとも考えられている。古くから伝わる知恵に、新しい技術と誰もが手に取りやすいポップなデザインを組み合わせることで、これを食べた時に地球環境問題を考えるきっかけになれば、と同社は説明している。

 他にも、乾燥したコオロギそのものが小袋に入ったスナックなどもある。ベーコン&チーズ味など3種類の味が楽しめるが、こちらは見た目がグロテスクなので健康食品というよりもちょっと変わり種的な扱いになっている。コオロギ食品は、ロサンゼルス以外の地域へも広がりを見せており、今後はもっと多くの商品の開発・販売が進むと予想されている。