サッカーのJリーグチャンピオンシップ(CS)は明日3日、埼玉スタジアムで浦和-鹿島の決勝第2戦が行われる。浦和MF柏木陽介(28)は持ち前の展開力に加え、肉体改造で運動量やボール奪取力に磨きをかけ、1年を通した活躍でチームを年間勝ち点1位に導いた。その裏には現役キー局アナウンサーながら献身的にサポートする、TBS佐藤渚アナ(29)の尽力があった。

浦和柏木を支える妻のTBS佐藤渚アナ(16年11月撮影)
浦和柏木を支える妻のTBS佐藤渚アナ(16年11月撮影)

 柏木はCSを前に、シルバーの髪を黒く染めた。「飽きたから」と笑うが、気持ちを切り替える儀式でもある。タイトル寸前、何度も苦杯をなめてきた。それでも「このサッカーで勝つ」と今季に懸けてきた。

 肉体改造の結果、体重は5キロほど絞れた。運動量、球際の強さもアップ。柏木は「トレーニングもあるけど、奥さんがサポートしてくれるから」と言う。

以前は外食、恩師からダメだし

 以前の柏木は食事はほとんど外食だった。13年夏、柏木はいつもの調子でSNSに外食の様子を載せた。うまいもん食って最高や-。「いいな」。「うまそう」。そんなコメントの中に“ダメ出し”がまじった。

 「代表の中心になれる選手が、何をしているんだ」。恩師である広島ユースの森山監督(現U-16日本代表監督)だった。柏木はしばらく考え込んだ末「節制する」とつぶやいた。

浦和MF柏木陽介
浦和MF柏木陽介

勤務時間を調整、朝から仕込み

 それなら私にも、やるべきことがある-。すでに交際中で、かたわらにいた渚夫人は「ご飯は私がつくる」と宣言した。柏木の希望は「夕食は午後7時半」。それに合わせるため、社に申し出て、勤務時間を配慮してもらえるようにした。

 練習が午前9時開始の際には同5時起床。1時間かけて朝食を準備する。柏木を送り出した後も、出勤前に1時間かけて夕食を仕込む。今秋まで夕方の情報番組「Nスタ」に出演もしていたが、その間も午後6時に第1部の出演が終わると、自宅に急行した。ご飯、汁物、肉、魚、副菜3品を定形通りにつくるには、普通なら2時間はかかる。それでは間に合わないため、朝の仕込みが必要だった。

 母は栄養士。自らも宮城学院女子大時代、調理や栄養学について学んだ。母譲りの資料や、学生時代のノートを引っ張り出し、再び読み込んだ。本人にアレルギー検査もさせた。ノートをつけ、毎食記録にも残す。多くの来客があっても、料理は大皿では供さず、1人前ずつ分ける。柏木が摂取するカロリー、栄養素などを把握するためだ。

 柏木は行きつけの飲食店が「柏木リスト」と呼ばれる食通。食の楽しみを奪わぬよう、変化をつける。目も楽しませたいと、彩りや盛りつけにもこだわる。2度と同じ献立はない。

 夫人は今年3月の結婚を機に、退職も考えていた。夫の遠征中以外は、自分の時間などほぼ持たない。「早よ帰らんと申し訳ない」と柏木は言う。格段に増えた自宅での時間は、中継観戦などサッカーを考える時間に費やす。最近では酒まで断った。夫人の後押しも得て、宿願を果たす時が来る。【塩畑大輔】

◆柏木陽介(かしわぎ・ようすけ) 1987年(昭62)12月15日、兵庫県生まれ。広島ユースから06年広島入り。ペトロビッチ監督に抜てきされ台頭し、07年にオシム監督率いる日本代表候補入り。10年から浦和でプレー。11年アジア杯日本代表。J1通算309試合出場50得点。日本代表通算11試合出場無得点。176センチ、73キロ。血液型AB。

◆佐藤渚(さとう・なぎさ) 1987年(昭62)11月7日、宮城県生まれ。幼少時から芸能事務所に所属。宮城学院女子大在学中まで、モデルやテレビのリポーターなどの活動をしていた。10年にTBSに入社し、アナウンサーとして活躍。16年3月に柏木と結婚。血液型O。

(2016年12月2日付日刊スポーツ紙面掲載)