南東からの暖かな日差しが、大きな窓から差し込むカフェテリア。ここは、東海大学付属札幌高校(北海道)の食堂だ。

東海大札幌のカフェテリア。大きな窓で明るい日差しが差し込む(写真左から櫻井選手、浦田主将、成田選手)
東海大札幌のカフェテリア。大きな窓で明るい日差しが差し込む(写真左から櫻井選手、浦田主将、成田選手)

 東海大札幌と言えば、2014年夏の甲子園では、スローカーブで話題を集めたエース西嶋亮太を擁し、2回戦進出。2015年センバツ高校野球大会では、道勢52年ぶりの準優勝を飾った強豪校だ。

 しかし、まだ耳慣れない学校名かもしれない。それもそのはず。今年4月、東海大四から東海大札幌へ学校名を変更するとともに、校舎も東海大札幌の敷地内に移転。スポーツ部男子部員が生活する寮も完全個室の「札幌望星塾」へと生まれ変わった。野球部の選手たちも、ほとんどがこの寮で生活。朝、晩は寮の食堂で、お昼は他の生徒たちと一緒に、カフェテリアで食事をとっている。

 この寮と、カフェテリアの食事を提供しているのは株式会社LEOCで、総勢12人のスタッフで調理を担っている。管理栄養士の福士結香子さんが選手たちの食事メニューを考え、マネジャーの大友正徳さんとともに、寮とカフェテリアの両方を担当している。

寮とカフェテリアの食事を担当する福士さん(左)と大友さん
寮とカフェテリアの食事を担当する福士さん(左)と大友さん

 「アスリートの基本の6品目をベースに主食、主菜、副菜で3食のバランスを考え、朝、昼、晩で組み合わせてメニューを作っています。1日1回は果物と牛乳や乳製品を必ず出すようにしています。メニューは2、3カ月のサイクルで、季節に応じて温かいものにしたり、冷たいものにしたりしています」(福士さん)。

 選手たちが決めた食事のルールは通称「2・2・3」。朝2杯、昼2杯、そして夜3杯のご飯を食べるというもので、各自、おかわりをして北海道産のお米「ななつぼし」をたいらげる。

人気メニューはチャンチャン焼き

 取材時に見せてもらったのは、選手たちのランチ風景。メニューはカレーライス。ご飯とルーは一般の学生に比べて大盛りに、サラダにざんぎ(唐揚げ)、野菜スープに果物もついて栄養はバッチリ。「小中学校の給食でのカレーは甘かった思い出があるんですが、ここのカレーは僕らの年代に合わせてちょっと辛めで美味しいですよ」(櫻井太一選手)と、味付けも好評だった。

この日のランチ。カレーライスと野菜スープ、サラダ、唐揚げ、フルーツ
この日のランチ。カレーライスと野菜スープ、サラダ、唐揚げ、フルーツ

 かつて福士さんは病院、大友さんは老人ホームに勤めていた。学生が相手の現在は「直接、反応が返ってくるので、わかりやすく楽しいですね」と大友さんは話す。

 福士さんも「楽しみながら、メニューを考えています。煮物は、肉じゃがくらいなら食べてくれますが、大根を煮ても食べない。生野菜の方が、野菜を食べる意識があるから、それならサラダにしよう、とか工夫をしています。選手が食べたいものばかり出していたら、油分が多くなってしまいますからね」と、高校生に食べてもらう研究を惜しまない。

「たくさん食べてね!」オープンキッチンでは、スタッフと選手たちの明るい会話も
「たくさん食べてね!」オープンキッチンでは、スタッフと選手たちの明るい会話も

 メニューの中で人気なのは、北海道の名物「チャンチャン焼き」。みそ味で煮込んだ鮭と野菜でご飯が進むのだそう。

 また、「このメニューの日は練習中からテンションが上がる」と選手たちが口を揃えるのは、ラーメン。「好評なので週に1回は出すようにしているんですが、ラーメンと一緒にご飯を同じくらい食べるので、炭水化物が多くなってタンパク質が少なくなってしまいます。そこで、昼食ではタンパク質を多めにして調整をするんです」と福士さん。好きなものを食べさせながら、1日全体の中でバランスを取らせている。

 「味もいいし、盛り付けもキレイだけど、最初は量がちょっと少ないかな、というのがあったんです。そこでお互いに意見を言い合い、今はベストな状態。味も量も文句なし。選手たちに、食事のストレスは全くありませんね」と大脇英徳監督も絶賛する。

この冬はハードな体力トレーニングが中心に。美味しいご飯は強い味方だ
この冬はハードな体力トレーニングが中心に。美味しいご飯は強い味方だ

 この秋、チームは北海道大会2回戦で敗退し、トレーニング、体作り、メンタル面と一から見直し、練習に励んでいる。

 「寮とカフェテリアのランチは本当に美味しい。冬場に体重を落とさず、パワーアップできるように取り組んでいきたいです」と浦田純平主将も意気込む。新しい取り組みから1年を迎える来春。選手たちはどんな結果を見せてくれるのか、楽しみだ。【保坂淑子】

カフェテリアの入口にはモーニングの看板も。高校では珍しい取り組みだ
カフェテリアの入口にはモーニングの看板も。高校では珍しい取り組みだ

モーニングもスタート
 新たな取り組みとして、カフェテリアでのモーニングサービスも始まった。焼き立てのクロワッサン、サラダ、茹で卵と喫茶店のモーニングそのものだが、選手たちの中には、寮で朝食を食べた後でも、カフェテリアに寄ってモーニングを食べる選手もいるという。

管理栄養士・山崎みどりのコメント

 とても恵まれた環境です。管理栄養士が3食を見てバランスを取るのは、通常の学校生活では難しいでしょう。特に好評の「ラーメン」は脂質が多くなるのはもちろん、一緒にご飯を食べるのであれば、やはり栄養が偏ります。その分、朝食、昼食で調整。翌日の食事まで見ることができるので、問題がないでしょう。「強いチームは食事がしっかりしている」を実践しているので、これからの活躍が楽しみです。

保坂淑子(ほさか・よしこ)

 フリーライター、エディター。日刊スポーツ出版社刊「プロ野球ai」デスク、「輝け甲子園の星」の記者を務める。「輝け甲子園の星」では“ヨシネー”の愛称で連載を持つ。「ヨシネーのひとりごと」(ニッカンスポーツコム)も連載中。