11月の全日本大学選手権で3連覇を狙う筑波大男子バスケットボール部は、馬場雄大(3年)ら才能豊かな選手が集い、現在開催中の関東大学リーグ戦(1部)でも13勝1敗で首位を独走している(10月21日現在)。

大学の男子バスケの強豪筑波大は、試合がある日はハーフタイムにエネルギーゼリー、試合後におにぎりとオレンジジュースの補食をとる

 部員全員が大学の近くで1人暮らし。そのうち約半数が自分で食事を作っている。小原翼(4年)と大友隆太郎(4年)は「お金がないから」と、自然に自炊主体の生活になったと振り返る。同部OBでもある吉田健司監督は「私が学生のころは練習後に開いている飲食店がほとんどなく、必然的に自炊するしかありませんでした。そういう伝統が残っているのかもしれません」と話す。

 今回は、1人暮らしの学生アスリートがどういった食生活を送っているのか、また上手に自炊するためのポイントについてレポートする。

料理にこだわり3食自炊、食事もトレーニング

 小さいころから両親と料理に親しんでいたという小原は、料理へのこだわりが人一倍強い。一通りのメニューを作ることができ、麻婆豆腐もレトルト調味料を使わず、豆板醤を炒めて作る。部で行ったバーベキューではローストビーフと、焼きそば麺を使ったカルボナーラを振る舞ったという。

198センチ、97キロの堂々たる体格を誇る小原

 基本的に3食自炊。週に2回、3つのスーパーを回り、より安くていいものを購入する。198センチ、97キロのセンターが、一般の主婦以上の主婦感覚で食材を探すのは、アスリートとしての意識の高さから。

 「コンビニでサラダを買えば100円以上するけど、スーパーでレタスを買って、自分でちぎって豆腐を乗せれば、同じ値段で何倍も量がとれます。ブロッコリーは高いので冷凍のものを使っていて、カットフルーツも冷凍のもの。食物繊維はジュースだととれないので、フルーツを食べます」。

 そんな小原のある日の食事メニューを聞いた。

小原翼のある日の朝食

【朝食】目玉焼き(卵2つ)、フルーツグラノーラ(脂質ハーフ)、サラダ、カットフルーツ、バナナ、プロテイン、チアシード、ココナッツフラワー(ココナッツの果肉を砕いたもの)が入ったスムージー、牛乳

小原翼のある日の昼食

【昼食】鶏むね肉のソテー(1枚)、ブロッコリー、ごはん(1合弱)、豆腐サラダ、納豆、牛乳

小原翼のある日の夕食

【夕食】牛ミスジ肉のステーキ、エリンギ、ブロッコリー、タマネギの炒め物、サラダ、ごはん、牛乳

※このほかプロテインを1日3、4回摂取

 体育館使用の割り振りの関係上、練習終了が午後10時になる日もある。そういう日は、練習前に帰宅して食事をとり、終了後はプロテインを飲むにとどめている。

 「最近は体のことに気を遣いすぎて、『食事=おいしい』というよりトレーニングみたいになっています。鶏むね肉を毎日、朝昼晩1枚ずつ食べていたときもありましたが、そのときは本当に“作業”でした」と苦い顔で振り返ったが、日々の努力で当たり負けしない強い体を作り上げた。

外食、コンビニ取り入れ無理なく継続

 大友は小原と違い、実家で暮らしていた高校時代まではほとんど料理の経験がない、いわゆる普通の男子学生。「最初は鍋とか簡単なものから始めて、レシピサイトで情報を集めて、少しずつレパートリーを増やしていきました」。体重は入学時の70キロから20キロ増の90キロだ。

 ある日の食事メニューは以下の通り。

【朝食】プロテイン。朝練後に牛丼屋で朝定食

【昼食】ごはん、冷凍の生姜焼き、野菜ジュース

【練習前の補食】卵かけごはんや納豆ごはん、ゆで卵など

【夕食】鶏もも肉の炊き込みご飯、野菜炒め、トマト、豆腐

【就寝前】プロテインの牛乳割り

 大友のモットーは「無理せず、できることをやればいい」。帰宅が遅くなる日は外食や出来合いのもの、調理に手間のかからないものを取り入れている。

 ただ、栄養バランスを考えることは忘れない。タンパク質、緑黄色野菜、その他の野菜、乳製品がきちんと取れているかを振り返り、足りていないと感じたら次の食事や補食でプラスするようにしている。夕食を外食で済ませるときも、帰宅後に野菜ジュースやヨーグルトを足す。

 「栄養のとり方は(部の)栄養講習会や中高の家庭科の授業で学んだことです」。茨城の進学校、水戸第一出身の大友は以前から栄養への意識が高く、その積み重ねが効いているのだろう。「真面目に生きてきましたから」と笑った。

9月の栄養講習会では4つのグループに分かれて栄養計算や筋肉量の計測などを行った(右前が1番筋肉量が多いグル―プ、左奥が1番少ないグループ)

自炊のポイントは1アクションと作り置き

 今シーズンから同部の指導にあたる管理栄養士の小林優紀さんは、自炊の利点として「自分が食べたものや量を把握しやすい」ことを挙げる。

 どうしても練習で疲れると、作ったり片付けしたりが面倒くさく、外食やコンビニ弁当で済ませたくなるが、そんな学生アスリートが自炊を継続するポイントとして「1皿で何でもありの簡単なもの」と「作り置き」を勧めた。

 「火を使わないようなものや1つのお皿で色んな食材を取り入れるものといった簡単なもの、例えばサラダや鍋物に野菜をたくさん入れるなど、1アクションでできるものがあると効果があると思います」。小林さんが勧めたのは、普段なかなか調理しにくい魚を使った「魚の缶詰と野菜のレンジ蒸し」だ。

魚の缶詰と野菜のレンジ蒸し

*■魚の缶詰と野菜のレンジ蒸し*
<材料>
・魚の缶詰(かば焼きがオススメ)
・野菜(残りものでも好きなものでも可)

<作り方>
・野菜は加熱しやすいよう、なるべく小さく薄く切る。ニンジンや大根などはピーラーやスライサーを使うと楽。
・野菜の上に缶詰を汁ごとのせる(水煮缶の場合はスプーン2、3杯程度)。
・ラップをかけてレンジで2、3分加熱

 「お好みでショウガ、ワサビなどのチューブの薬味や、ポン酢などをかけてください。魚の缶詰の代わりに市販のハンバーグを使ってもおいしいですよ」と小林さんが作り置きを勧めたのは、ゆで卵。

 「ゆで卵は立派な卵料理です。メイン料理でも、サラダでも、麺類でも、何にでもプラスできますし、おやつにそのまま食べるのはもちろん、ざっくりマヨネーズと混ぜてパンにはさんでもおいしいです。調味液に漬け込んで冷蔵庫に入れておけば、煮卵にもできます」(小林さん)。

 ちなみに、自炊しないとダメなのだろうか? 

 「そういうわけではありません」と小林さんはきっぱり。「実家からおかずを送ってもらったり、友人や恋人に作ってもらったり、いい意味で第三者に頼るのも手です。ただ、『何でもいい』でなく、栄養を考えて『こういうものを作って』とリクエストできるようになってほしいですね」とアドバイスを送った。

 私大に比べて予算が限られる国立大では、栄養サポートにかけられる予算も多くはない。自分たちで考え、自分たちで用意して、食べる。そのような環境で選手たちはたくましく成長し、結果を導き出している。【青木美帆】

筑波大男子バスケットボール部

1927年創部の大学バスケ界屈指の古豪。全日本学生選手権優勝3回、準優勝10回などの戦績。卒業生に清水太志郎(サンロッカーズ渋谷)、田渡修人(三遠ネオフェニックス)、笹山貴哉(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)など。