前回のコラム「パルマを代表する伝統チーズと生ハム、イタリアスポーツ界の疲労回復食」では、パルミジャーノ・レッジャーノチーズとパルマハムの栄養価の高さを説明しましたが、今回はそれらを使った簡単なレシピを2つ紹介します。

パルミジャーノ・レッジャーノチーズとパルマハムを使った簡単パスタ
パルミジャーノ・レッジャーノチーズとパルマハムを使った簡単パスタ

「パルミジャーノ・レッジャーノチーズとパルマハムを使った簡単パスタ」
<材料(2人前)>
・スパゲティ(160g)
・A.パルミジャーノ・レッジャーノ(50g)
・A.パルマハム(50g)
・A.バター(10g)

<作り方>
(1)パルミジャーノ・レッジャーノは削っておく。パルマハムはせん切りにする。
(2)スパゲティを表示されている茹で時間で茹でる。
(3)茹でたスパゲティと、A.を混ぜ合わせる。

豚肉のパルマハムとパルミジャーノ・レッジャーノチーズ巻き
豚肉のパルマハムとパルミジャーノ・レッジャーノチーズ巻き

「豚肉のパルマハムとパルミジャーノ・レッジャーノチーズ巻き」
<材料(2人前)>
・豚ロース肉(4枚)
・パルマハム(薄切り8枚)
・パルミジャーノ・レッジャーノ(20g)
・バター、オリーブオイル(各適量)
・小麦粉(少々)
・塩(少々)
・ワイン(少々)

<作り方>
(1)豚肉の上にパルマハム2枚をひき、その上に薄く切ったチーズをおく。
(2)肉を巻き、全体に薄く小麦粉をふる。
(3)フライパンにバターとオリーブオイルを熱し、巻き終わりを下にして肉を入れて軽く焼く。
(4)(3)にワイン、塩を加えて、火が通るまで煮る(煮すぎると肉が固くなるので煮すぎないように注意)。

 いかがですか。ハムにもチーズにも塩分があるので、調理に塩をほとんど使っていないことにも気づきましたか。

イタリアの栄養の権威が検証

 このレシピについて、イタリアの名門パドバ大の生物医学科教授で、サッカー、ラグビー等さまざまなクラブの栄養コンサルタントをしているパオリ教授に栄養学の観点から検証してもらいました。パルミジャーノ・レッジャーノチーズ、パルマハムともに、アスリート食に最適だと話しています。

パルミジャーノ・レッジャーノチーズ

 このチーズは、100g中33gとタンパク質が大変豊富です。中でも、からだの中でつくることのできない必須アミノ酸を多く含んでいます。12カ月以上という長期熟成により、タンパク質がさらに小さなペプチドに分解され、非常に消化が良く、試合前にも適した食事となります。ビタミン、ミネラル、鉄分も豊富で、アスリートの食事として非常に適しています。

 またアスリートは、負荷の高い練習や消耗の激しい試合などで亜鉛も欠乏し、免疫力が低下しがちですが、これは1キロのチーズを作るのに16リットルの牛乳が必要であるという製法から、栄養価が濃縮され、亜鉛の含有率も高くなっています。

パルマハム

 パルマハムもアスリートにとって必要な栄養食品です。興味深いのは100g中18.8gのタンパク質の中で、20%以上がバリン、ロイシン、イソロイシンという分岐鎖アミノ酸(BCAA)ということ。分岐鎖アミノ酸は筋肉作りに役立つ成分です。

 また、エネルギー源として重要な脂質、健康に良いとされる不飽和脂肪を含んでいます。そのうち45%はオリーブオイルの主成分であるオレイン酸、15%程度はリノール酸です。脂身を取り除いたハムは100gで150カロリーとなり、脂肪分は5%減ります。ビタミンB群も多く含みます。

アスリート食に必要な要素

 次に、パオリ教授はアスリートの食事を考える時に必要な要素として、以下を挙げました。

1、スポーツの種類、運動の質、量によって摂取エネルギーが変わる
 ・長時間大量のエネルギーを費やすスポーツ(カヌー、自転車、マラソン等)
 ・断続的なエネルギー消費のスポーツ(サッカー、バスケット、バレーボール、テニス等)
 ・短時間に高エネルギーを消費するスポーツ(短距離走、ジャンプ競技,競泳,飛び込み等)
 ・エネルギー消費の少ないスポーツ(アーチェリー、射撃等)

2、選手の体の状態、スポーツに適した脂肪量、筋肉量、性別

3、選手の個人的特徴、(性別、年齢、体の大きさ)

4、練習段階と目的、特性に応じた段階

 どういうスポーツをするか、またどういう選手であるかによって、食事のアプローチは変わってきます。長時間大量のエネルギーを消費するスポーツでは高カロリー摂取が必要ですが、消費カロリーの少ないスポーツでは違うアプローチが必要。そのため、どういうスポーツをするかにより、1日の炭水化物、タンパク質、脂肪の量を計算するべきです。

 一般的な配分は、炭水化物50~70%、タンパク質10~25%、脂質20~35%と言われています。近年、炭水化物の低い摂取で長時間のスポーツをするというケトジェニック・ダイエット(糖質制限)がもてはやされていますが、一般的には炭水化物が供給のベースと言えます。エネルギーとしてだけではなく、筋肉内の糖分の貯蓄をする筋グリコーゲンを適量で保つため、炭水化物が必要です。

 脂質もスポーツ選手、特に高カロリーを摂取しなければならない選手にとって重要です。1gのカロリーは炭水化物、タンパク質と比較して倍以上(9kcal、炭水化物タンパク質は4kcal)というだけではありません。負荷の高い練習は軽い炎症を起こすことになり、スポーツ選手は慢性的に軽い炎症を患う状態にあるため、オメガ3脂肪酸など炎症抑制作用がある脂質は、スポーツ選手の栄養素として大変重要です。

 タンパク質も非常に重要ですが、スポーツ栄養学のためのインターナショナルソサイエティーのガイドでは、スポーツの種別、1週間の練習別等が細かく分けられ、1kgの体重に対して1.4~2gに抑えておくべきと指摘しています。一般的に耐久性スポーツは、1kgの体重に対して1.2~1.5g。重量挙げのような出力の必要なスポーツは2~2.2gまで必要値が上がります。

「栄養」は練習、回復ともに重要

 最後にパオリ教授は、スポーツにおける「栄養」は、「練習」「回復」とともに三角形を成す一辺であり、とても重要だと強調しました。これはトップアスリートでもアマチュア選手でも同じです。さらにアスリートの食事は、栄養摂取のことを考えるだけでなく「食事自体を楽しむことも重要」と話し、「良質の食品を美味しくいただき、勝利を勝ち取れ!」とのメッセージをもらいました。

 なお、日本国内でパルミジャーノ・レッジャーノチーズは、大手スーパーやチーズショップで、パルマハムはイタリア食専門店や輸入食材を扱うショップなどで購入できます。【パルマ在住・西村明美イタリア通信員】