元大日本プロレスのレスラーだった大谷将司さん(29)は、プロレスを辞めて昨年8月に渡米。ボディービルダーを目指すようになり、食生活とトレーニングを中心とした体の改造に取り組んだ。4カ月で20キロの減量に成功。体が変わったことで、食事の大切さを実感していると言う。【聞き手・千歳香奈子】

現在は米国でボディービルダーを目指す大谷将司さん
現在は米国でボディービルダーを目指す大谷将司さん

 高校生の頃は体の線が細く、最初に某プロレス団体に入ったのですが、ケガで試合に出られなくなってしまいました。その後もあきらめられず、大日本プロレスの入門試験を受けて練習生となりました。

 プロレスは体と体が当たるスポーツ。軽トラックとぶつかったくらいの衝撃がありますから、当たっても大丈夫なように、体を大きくするためにちゃんこを大量に食べさせられました。

プロレス時代はちゃんこで増量、1食6000キロカロリー超

 お相撲さんと同じで、練習が終わるとちゃんこを食べて昼寝の繰り返し。大きな鍋を練習生3、4人で囲んで、白いご飯だけで5~6杯食べさせられ、消化不良で眠れない時もあるほどでした。1日3食でしたが、1食だいたい6000~8000キロカロリーとっていました。プロレスは日本人独特の根性論があるので、折れない心がついたという面ではやっていてよかったと思います。

 超肉体派俳優が出演した映画「ワイルド・スピード」を見て、米国留学を決めました。最初はトレーナーを目指していましたが、今はボディービルダーを目指してトレーニングをしています。

練習前に炭水化物、食後はタンパク質

 まずは徹底的に食生活を見直しました。夜9時以降には炭水化物を取らないようにし、タンパク質を中心にした食生活に切り替えました。日本では白飯をたくさん食べていましたから、最初はお腹が空いてきつかったですが、だんだん慣れてきました。炭水化物を減らした分、筋肉が分解されやすくなったので、それを防ぐためのサプリメントなどもとっています。

 練習の1時間半くらい前に炭水化物を取り、終わった後はタンパク質をとります。タンパク質は1日230~240グラムを目途にしています。水は1日に6~8リットルを取るようにしています。水分を取らないと栄養がまわらないと聞くので、筋肉を発達させるためにも体内の水分量を常に保つように心がけています。

 朝は体が栄養を欲しているので、起きてすぐに水を500ミリリットル飲んで、その後すぐにシェイクやヨーグルト、バナナなどを食べるようにしています。昼はサラダやゆで卵を語学学校にお弁当で持って行って食べています。卵は白身だけですが、1度に12個くらい食べるので、周りはびっくりしますね。たまに照り焼きチキンなども食べます。夜ごはんまでの間にお腹がすくと、ヨーグルトや納豆、そばなどを食べます。

プロレスラー時代の大谷将司さん
プロレスラー時代の大谷将司さん

 夕食はトレーニングの後に赤身ステーキ肉や鶏肉などタンパク質を中心に食べます。食事に関しては色々なところから情報を得て、自分にあったものを試しています。こちらのジムの人から、炭水化物は60~70グラムに抑えると聞き、それを実践。この10カ月で、目に見えて体が変わりました。

 来た当初は、アメフト選手のような大きな体でしたが、今では引き締まった体に変わってきました。腹筋以外では、血管が浮き出てくるようになりました。体重は最初の4カ月間で20キロくらい落ち、動きが軽くなりました。食生活に気を付けながら、有酸素運動をするようにした結果です。今は食事と筋肉トレーニングで体重を落とすようにしています。

プロレスラー時代の大谷将司さん
プロレスラー時代の大谷将司さん

ジュニア世代、中高生スポーツ選手に伝えたいこと

 米国のボディービルダーは「美味しい物にはとげがある」と言うそうですが、美味しい物には脂質や着色用、甘味料などが入っていますから、やはりジュニア世代でスポーツをやっている人たちは気をつけた方が良いと思いますね。

 まずは強い体を作ることが基本ですから、なんでも好き嫌いなく食べることが重要です。そこから先に、かっこいい筋肉をつけようと思った時には、ストイックな食生活をしないとダメですね。細い木から彫刻を作ろうと思ってもなかなか難しいですが、太い木からは美しい彫刻ができます。それと同じで、身体もまずは大きくして、太い幹を作ってから削って筋肉を作っていくのが理想です。その繰り返しで、ちょっとずつ筋肉が大きくなっていきます。

 筋肉ができてくると、新陳代謝も良くなりますので、汗も沢山かくようになりました。それに筋肉が増えると運動をしても体が温まりやすくなるので、ケガをしづらくなります。何のスポーツもそうだと思いますが、自分に勝たないとダメです。コンディションが良い時は誰でも練習できますが、コンデョションが悪い時でも練習するのがプロフェショナルだと昔プロレスラーの方に言われたことがあります。それを今でも念頭においています。

大谷将司(おおたに・まさし)

 1986年10月17日生まれ。神奈川県川崎出身。高校生1年生から3年間、アニマル浜口トレーニングジムに通いながら、身体を鍛える。23歳の時に大日本プロレスに志願して入団テストを受け、合格。2011年2月2日、大日本プロレス横浜にぎわい座大会「DAINICHI-X」vs アブドーラ小林&岡林裕二戦でデビュー。3年半後に家庭の事情により退団。2015年8月、米国でトレーナーの勉強をするためにロサンゼルスに留学。180センチ、93キロ。