練習が終わった後、選手たちは即座にベンチに集まり、クーラージャグタンクの飲み物でひと息ついた。しかし、そこから出てくる飲み物は、スポーツドリンクではなく、何やら白い飲み物? いつもはプロテインを飲んでいるコップで約50mlをグビグビグビ~っと一気飲み!

練習後には、豆乳をグビグビグビ~! おいしそうに一気飲みする沖縄尚学の選手たち
練習後には、豆乳をグビグビグビ~! おいしそうに一気飲みする沖縄尚学の選手たち

 「約9年ほど前から、練習が終わった後に豆乳を飲ませています。最初は保護者に豆腐屋さんがいて差し入れをしてもらったのがきっかけ。以来、体にいいんじゃないかと思い続けてきました」(比嘉公也監督)。

 沖縄の豆腐は“島豆腐”と呼ばれ、一般的な豆腐よりも硬く、これを使った“チャンプルー”などが有名。他にも、“ゆし豆腐”や“ジーマミー豆腐”“豆腐よう”など、名産として知られるものが多くある。沖縄尚学では、そんな地元ならではの食材、豆乳が、選手の体作りをサポートしている。

 現在は、南風原町にある「花城キヨ豆腐」の豆乳を購入。毎日、コーチがチームのクーラージャグタンクを持参し直接入れてもらっているそうだ。

 「最初の頃、飲んでいた豆乳はしぼりたてのもので、かなり飲みにくかったんですが、現在は少し調整してもらって飲みやすくなっています。選手たちも段々慣れてきて、最近ではおいしいって飲みますね」(比嘉監督)。

1日20リットルの豆乳はあっという間になくなるそう
1日20リットルの豆乳はあっという間になくなるそう

 さて、私もちょっといただいてみたが…。もともと豆乳が苦手っていうのもあるが、市販のものよりも味が濃くて独特の味。豆乳というよりも、豆腐を飲んでいると思えば、おいしく飲めるかも??? それくらい栄養分タップリの豆乳だった。

 「最初は苦手でしたが、練習後に飲むとおいしく感じててくるんです(笑)。今ではすっかり慣れて、おいしく飲めています」(平成28年度卒中村将己選手・現亜大1年)

 なるほど、喉が渇いて空腹な状態なら、おなかにどんどん入っていくのだろう。

練習後30分以内に飲む、骨強化に効果

 「練習後の30分以内がゴールデンタイムと言われるらしく吸収率が高いそうです。その時間にいつも飲ませているんですが、疲労骨折などが少なくなり、豆乳は半年ほどで選手の体重に変化が表れたと思います。骨は強くなったんじゃなでしょうか」(比嘉監督)。

 そういえば、最近、沖縄尚学の選手たちからケガの話を聞くことはほとんどない。そればかりか、これまで甲子園では沖縄の選手たちは他県に比べ、体が小さいという印象をもっていたが、選手たちは入学から5~8キロも体重がアップ。今では下半身がどっしりとして、引けを取らないパワーを見せているように思う。

 「もちろん、体が大きくなっただけではダメ。自分の体重にあったトレーニングに、この冬、春と取り組んできた成果でもあると思います」(比嘉監督)。

 豆乳パワーで元気に走り回る選手たち。甲子園の頂点を目指す沖縄尚学の選手たちの夏が楽しみだ。【保坂淑子】

管理栄養士・山崎みどりのコメント

 「豆乳は身体に良い」という話は皆さん、聞いたことがあるのではないでしょうか。そして「牛乳の代わりに豆乳は?」という質問も良くあります。大きな違いは、牛乳は動物性のもの、豆乳は植物性。豆乳と牛乳を比べるとタンパク質はほぼ同じなのに、エネルギーが低く、脂質が低い、鉄が多い。筋肉をつけるために、運動後にプロテイン感覚で飲んであげるのは良いタイミングです。ただ、牛乳に比べてカルシウムが少ないので、食事などでしっかりカルシウムがとれるような工夫は必要になりますね。

保坂淑子(ほさか・よしこ)

 フリーライター、エディター。日刊スポーツ出版社刊「プロ野球ai」デスク、「輝け甲子園の星」の記者を務める。「輝け甲子園の星」では“ヨシネー”の愛称で連載を持つ。「ヨシネーのひとりごと」(ニッカンスポーツコム)も連載中。