<脂質の話・下>

前回のコラム「「体に良い油」の正体は、何をどれくらい摂ればいいのか」では、脂質の種類や摂取目標量について説明しました。今回は、「体に良い」と言われるn-3系(オメガ3)多価不飽和脂肪酸について深掘りしていきます。

なぜ「体に良い」と言われるのか

n-3系多価不飽和脂肪酸にはαリノレン酸、EPA、DHAがあり、エゴマ油やマグロなどの青魚、卵黄に多く含まれています。

α-リノレン酸
 アマニ油、エゴマ油、シソ油、クルミ
EPA
 イワシ、マグロ、サバ、サンマ、ブリ
DHA
 マグロ、サバ、ブリ、ウナギ、サンマ、卵黄

n-3系脂肪酸が「体に良い」と言われるのは、次のような作用や効果があるからです。特に「おとな世代」は美容と健康、生活習慣病予防や認知症予防のためにも積極的に摂った方が良い油といえます。

n-3系脂肪酸の主な作用や効果

血管拡張作用があり、血流を改善する
HDLコレステロール(善玉コレステロール)を上昇させ、動脈硬化疾患(心筋梗塞、脳梗塞)を予防する
中性脂肪を下げる(EPAは薬にもなっている)
抗炎症作用があり、アレルギーや炎症性腸疾患を改善する
DHAは唯一脳に入ることが可能な脂肪酸で、脳を活性化し認知症を予防する

さらに、魚の摂取量が多い妊婦・授乳婦の子どもは脳内のDHA量が多く、学習機能が向上するとも言われています。またEPAは、摂取すると赤血球の膜に取り込まれて血液粘度が低下し、血液がサラサラになることが報告されています。

摂取すると良い量は

食事摂取基準(2020年度版)によると、1日に目安とするn-3系脂肪酸の量は、成人では2.0g前後とされています。2.0gが摂れる食品の分量は次の通りです。

n-3系脂肪酸を2.0g含む食品と食品量

・マグロ=100g(大きめの切り身1つ)
・ブリ=60g(小さめの切り身1つ)
・サンマ=36g(小さめの半身)
・サバ缶(水煮)=73g(1缶)
・クルミ=22g(4個)
・アマニ油、エゴマ油=それぞれ3.5g(小さじ1杯弱)
・なたね油=26g(大さじ2強)

これを見ると、前回のコラムでも伝えた通り、アマニ油やエゴマ油を毎日小さじ1杯摂ると良いと言われる理由が分かります。ただ、これらの油は熱で酸化しやすいため、サラダやあえ物に使うと良いですね。なお、オリーブ油はオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)が多く、n-3系脂肪酸は少量しか含まれません。

魚も1日1回は食べるように心がけ、可能な限り青魚を選びましょう。魚の摂取量が少ない人は、ナッツをひとつまみ食べるのでも良いですね。しかし、クルミは22g(小袋1パックほど)で156kcalもあるため、その分、間食や食事を減らすことを忘れないようにしましょう。

過剰摂取には注意、副作用も

しかし、いくら体に良いからといって、摂りすぎには注意が必要です。過剰摂取すると吐き気や下痢 、出血が止まりにくくなるといった副作用が起こる可能性があります。油ですから、摂りすぎれば肥満につながります。多く摂ってもより多くの効果を得られるものではないので、特にサプリメントを利用する場合は注意が必要です。

加えて、前回も書いたようにn-3系とn-6系の比率は「1:4」にすることが大切です。まずは脂質全体の量(総量)を考えて飽和脂肪酸の量を増やしすぎないようにし、さらにn-6系の摂取が多い場合は減らし、バランスを心がけましょう。

管理栄養士・今井久美