<コロナに翻弄された人たち:2020年を振り返る>

1年の壁は高かった-。ラグビー7人制男子元日本代表の桑水流(くわずる)裕策(35=コカ・コーラ)は、苦渋の決断を下した。

10年以上日本代表をけん引した“ミスターセブンズ”は、自宅待機期間だった今年4月末に引退を決意した。1カ月以上悩んだ末、出した答えは「五輪断念」だった。「(五輪が1年3カ月後となり)目の前のボールが見えないところに行ってしまった感じだった…。35歳という年齢と自分自身と向き合い、21年には切り替えられなかった」。

リオデジャネイロ五輪3位決定戦の南アフリカ戦で、相手のタックルを受けながらもトライを決める桑水流裕策(2016年8月11日)
リオデジャネイロ五輪3位決定戦の南アフリカ戦で、相手のタックルを受けながらもトライを決める桑水流裕策(2016年8月11日)

感動を呼んだ強豪ニュージーランド撃破

16年リオデジャネイロ五輪では主将を務めた。全6試合に先発し、愚直な献身的なプレーで体を張り続けた。1次リーグで優勝候補のニュージーランドなどを撃破。4位入賞の快挙を成し遂げ、国内外に大きな感動を呼んだ。

リオデジャネイロ五輪から帰国した桑水流裕策主将ら男子7人制ラグビーのメンバーたち(2016年8月14日)
リオデジャネイロ五輪から帰国した桑水流裕策主将ら男子7人制ラグビーのメンバーたち(2016年8月14日)

完全燃焼したリオ五輪後に代表を引退。15人制に専念していたが、昨年7月にあと1歩及ばなかったメダルへの思いが強くなり代表復帰した。「メダルを取って15人制との格差をなくし、マイナーな7人制の環境を変えたかった」。19年W杯日本大会で初の8強入りした日本代表の活躍も大きな刺激になった。「20年は7人制の番だ」と気持ちを奮い起こした。心身ともに万全な状態で今年7月の大舞台に臨むはずだった。

しかし、予想外の形で2度目の挑戦を終えた。15人制で競技を続ける桑水流は最後にこう言った。「自分たちを信じることが、成功の近道になるはず」。35歳の元闘将は、後輩たちにメダル獲得の夢を託した。【峯岸佑樹】

◆桑水流裕策(くわずる・ゆうさく)1985年(昭60)10月23日、鹿児島県生まれ。鹿児島工でラグビーを始める。福岡大2年時に7人制日本代表に初選出。08年にコカ・コーラに入社。ポジションはフランカー。今年1月に7人制女子「ナナイロプリズム福岡」の監督に就任。趣味はキャンプ。家族は妻と3男。188センチ、102キロ。

(2020年12月17日、ニッカンスポーツ・コム掲載)