<イップスって何?(12)>

イップス先生こと、イップス研究所の河野昭典所長(59)に、無意識のメンタルトレーニングを詳しく説明してもらいます。イップスに悩む選手に対し、脳の無意識の領域をリラックスさせます。このケアを省くと、イップスは改善が困難になるといいます。

「イップスの多くは固定観念が引き起こします。指導者の強制や、自身の高い理想から『こう投げなくてはいけない』『暴投してはいけない』と思ってしまう。どんどん、きゅうくつになります。その固定観念を解きほぐす。まず脳にリラックスしてもらう。脳の中をマッサージすると言えば分かりやすいですかね」

脳のリラックス…分かるようで分かりません。具体的にどのように行うのでしょうか? そう問うと、河野所長は「では、やってみますか」と勧めてくれました。私自身が、無意識のメンタルトレーニングを体験することになりました。

研究所の一室に入り、白いリクライニングソファに座りました。背もたれを深く倒し、足を伸ばしました。目をつぶると、河野所長の「何もせず、何もしようとせず、力を抜いてください」という声がしました。

「20段の階段を1段ずつ下りていきます。ゆっくり… ひとっつずつ… じゅうきゅう、じゅうはち…」。同所長の口調は、かなりゆったりしたテンポでした。【飯島智則】