アスリートは貧血になりやすく、貧血予防には鉄の摂取が必要であることがよく知られています。貧血にはいくつか種類がありますが、アスリートに多く見られるのが「鉄欠乏性貧血」と「スポーツ貧血」です。

成長期、女性に多い鉄欠乏性貧血

 「鉄欠乏性貧血」は字のごとく、赤血球中のヘモグロビンの材料になる鉄が不足すると起こる貧血です。

 特に成長期の小学校高学年から中学生は、鉄の必要量が増えます。また、女性は月経が始まると、月経血として失われる鉄の分も必要になるため、さらに必要量が増えます。月経のある女性の約半数が貧血、または貧血予備軍といわれています。

 アスリートは、筋肉を作るのに必要な上に、汗や尿などから鉄が排せつされるため、需要が一層増えます。鉄欠乏性貧血になると、酸素の運搬が十分にできなくなり、息切れなどでパフォーマンスが低下するので、何としても回避したいところです。

足底の衝撃で赤血球壊すスポーツ貧血

 「スポーツ貧血」は、足底に衝撃が多いスポーツ(マラソンなど陸上競技やバレーボール、剣道など)でよく見られるもので、衝撃により赤血球が壊れる溶血性貧血です。尿の色が赤くなったら要注意です。食事も大切ですが、トレーニングメニューも見直す必要があります。

 どちらの貧血も、鉄の摂取量を増やすことが重要ですが、ビタミンCやクエン酸(果物)、乳酸(ヨーグルト)、酢酸(お酢)など酸味のものを一緒に摂ったり、タンパク質と一緒に摂ったりすることで、鉄の吸収を促進します。また、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸は赤血球の合成を助けるため、摂取したい栄養素です。

 ビタミンB6はニンニクやマグロ、カツオや鶏肉に多く含まれています。ビタミンB12は貝類やレバー、魚卵に多く、葉酸はレバーや緑黄色野菜(特に緑色の野菜)に多く含まれ、これらは鉄も多く含みます。酢の物やヨーグルト、果物を一緒に摂り、鉄の吸収を高めましょう。【管理栄養士・今井久美】