センバツ高校野球準々決勝(29日、甲子園)で、山梨学院(山梨)がエース林謙吾(3年)の好投で作新学院(栃木)に12-3と快勝し、春夏通じて初の4強入りを決めた。4試合連続で先発し、8回を6安打3失点に抑えた林のエネルギー源は、駿台学園中(東京)時代にコロナ禍でも続けた「食育」「コンディショニング」「柔軟性」が土台になっている。過去記事と合わせて紹介する。【樫本ゆき】

作新学院対山梨学院 山梨学院先発の林謙吾(撮影・前岡正明)
作新学院対山梨学院 山梨学院先発の林謙吾(撮影・前岡正明)

140キロに満たない直球、緩急で翻弄

昨秋の関東大会で初優勝した山梨学院を率いた林は、記者の姿を見ると「柔軟性はいまもキープしています!」と中学時代に見せた「開脚ペタン」を再び披露してくれた。「大会は連戦なので、勝ち進むにつれてどうしても質が落ちてくる。その中で、速くない球をいかに速く見せるかを考えて投げています」。

140キロに満たない直球で空振りを取る林の投球は、全ての高校球児のお手本のような投球だ。変化球でカウントを取り、コースいっぱいに直球を投げ込む。林はマウンドでの心構えについて「自分の土俵でカウントを取る。投球のリズムを大事にする。カーブを織り交ぜるなど、単調にならない間を作る」と話した。吉田洸二監督(53)も「緩急が彼のストロングポイント。研究熱心な林がフォーム固めを何度も繰り返してたどり着きました」と称えていた。

昨秋の関東大会優勝後、「開脚ペタン」を披露する林
昨秋の関東大会優勝後、「開脚ペタン」を披露する林

疲れを残さないために、宿泊先のホテルでもルーティーンのストレッチと筋膜リリースは欠かさなかった。筋膜リリースとは、疲労した筋膜を柔らかくすることで萎縮や癒着を引きはがし、関節の可動域や筋力の柔軟性を回復させるケア方法で、林は専門家の指導を受けて自分の身体のコンディショニングに努めていた。

学業優秀で探求心、念願の日本一へ

全国制覇を目指した中学3年の2020年は、コロナ禍ですべての全国大会が中止になった。林は1年の夏の全国大会(全中)で森木大智投手(阪神)を擁する高知中と対戦し、延長戦で敗退。最終学年は新チーム結成から公式戦無敗で練習試合を合わせてもほぼ負けなしだっただけに、日本一のチャンスを奪われ、落胆した。

しかし、気持ちを切り替えた東京都の代替大会で優勝。引退後も高校野球に向けたトレーニングを続け「甲子園で優勝」への準備を進めていた。

駿台学園中の勝谷大コーチ
駿台学園中の勝谷大コーチ

駿台学園中の勝谷大コーチ(34)は「キャプテンも務めていた謙吾は学業も優秀で、探求心を持って練習に取り組んでいました。栄養のことも研究熱心で、日中は糖質を多めに取り、中学生に合ったプロテインを昼休みに飲んでタンパク質をとり、サプリメントも取り入れて春から夏の間に体重を6キロ増やしました。大きな舞台で力を発揮するための準備と思考は、中学時代から身に付けていたと思います」と感心する。

中学時代に果たせなかった日本一まであと2勝。林は31日の準決勝に向け、万全のコンディションを整えている。