リオデジャネイロ五輪に出場したバレーボール女子元日本代表の佐藤あり紗選手(32)は、現在、今季V2リーグ初参戦中のリガーレ仙台で選手兼監督として活動している。子どもの頃に苦手だった食べ物をどのようにして克服したのか、夜に練習を行う中で、体調を整えるために食事面で気を付けていることは何か、食にまつわる話を聞いた。【聞き手・中西美雁】

リガーレ仙台で選手兼監督として活躍する佐藤あり紗(撮影・坂本清)
リガーレ仙台で選手兼監督として活躍する佐藤あり紗(撮影・坂本清)

-先日(11月20日の千葉戦で)、待望のVリーグ初勝利を挙げた

はい。創設4年目。チームができてからここまで長い道のりでした。支えてくださった方々すべてに感謝しています。

-監督兼選手で忙しい中、体調管理で気を付けていることは

バランスがいい食事にすることです。今は練習時間が夜なので、ご飯のタイミングについて気をつけていますね。朝ごはんは軽めにして、昼と練習前2時間前くらいに食べて、練習が終わってからもちょっと食べています。食べる量は自分の体調によって変えていますし、食べるものに関しても、もちろん気をつけています。

-具体的にはどんなふうに

よく食べるのは、豆腐にキムチと納豆とシラスをかけて、しょうゆをかけない「変わり冷奴」です。これは毎日食べていますね。サラダも、ベビーホウレン草をドサッと入れて、トマトとアマニ油の粉末かチップをのせて、白ゴマ、黒ゴマをかける。ドレッシングはなるべく使わないようにして、オリーブ油と塩で食べています。あと、もち麦も食物繊維が多いので、結構活用しています。

佐藤選手が作った朝ごはん。雑穀ごはん、シジミのみそ汁、生ハムサラダ、アボカドとチーズのオーブン焼き、いぶりがっこ+クリームチーズ、納豆とシラスをかける変わり豆腐、ヨーグルト、レーズン(本人提供)
佐藤選手が作った朝ごはん。雑穀ごはん、シジミのみそ汁、生ハムサラダ、アボカドとチーズのオーブン焼き、いぶりがっこ+クリームチーズ、納豆とシラスをかける変わり豆腐、ヨーグルト、レーズン(本人提供)

-好き嫌いはあるか

好きな食べ物は、地元仙台の食べ物ばかりになってしまうんですけれども、牛タンやホヤ。あとはカニ、お肉、チーズとか…好きなものがたくさんあって困ってます(笑)。苦手なものは抹茶ですね。これはどうしても克服できませんでした。

-柳田将洋選手も、抹茶は「草っぽい味がしてダメ」と言っていた

そうなんですね(笑)。一緒ですね。

-その好き嫌いは子どもの頃から?

実は、子どもの頃は苦手な食べ物は色々あって、一応調べて調理を工夫するなど、克服するような努力はしました。昔はアボカドが苦手でしたが、今は好きになりました。栄養士さんからサポートしてもらっていた時に「これは栄養価が高いんだよ」と言われたものも食べるようにしました。例えば、それまでブロッコリーを全然食べなかったんですけど、「体作りに良い」と知ってから、食べるようになりました。

リガーレ仙台の佐藤は精神的支柱だ(撮影・坂本清)
リガーレ仙台の佐藤は精神的支柱だ(撮影・坂本清)

-子どもの頃の食の思い出は

母は栄養を色々考えて作ってくれていたんだなと、今になると思います。私が部活以外で練習をする機会が多かったので、そういう日にはおにぎりだけでなくちょっとしたおかずをつけてくれたり、練習後に食べるものの量なども工夫したりしてくれていました。お弁当を持っていくときは「なるべく温かいものをとるといい」と、スープやおみそ汁といった温かい汁物を持たせてくれていました。保温ができる容器を使っていました。

佐藤あり紗(撮影・坂本清)
佐藤あり紗(撮影・坂本清)

-補食の習慣もすでにあった?

そうですね。ゼリー飲料なども活用しましたね。

-ご自身の食の意識も高かった?

今ほどはなかったです。食についてきちんと考えるようになったのは、社会人になってからです。

佐藤が作った料理の数々(本人提供)
佐藤が作った料理の数々(本人提供)

-日本代表では海外遠征にもよく行った

海外の食事はあまり食べることができなくて、日本から持っていったアルファ米を中心に食べていましたね。海外では生野菜は食べないようにという指導がありました。食べられるものはなるべく現地のものを食べるようにしましたが、やっぱりアルファ米とおみそ汁にはお世話になりました。リオ五輪の時は、ハイパフォーマンスセンターなどで日本食が提供されたので、食事で困ったことはなかったです。

-「おふくろの味」は

これは栄養とかは関係なくて、実家で作る「おくずかけ」という料理です。地元の郷土料理ですね。私はみそ汁とかスープ系がすごく好きなんですが、この「おくずかけ」は、いろんな野菜が入っている、とろみのあるめんつゆ味の汁物なんです。私のソウルフードですね。今は地元にいるので実家にしょっちゅう帰っていて、「食べたいな」と言うと、姉や母が作ってくれますね。

母が作った「おくずかけ」。宮城の郷土料理で彼岸や盆に作られることが多い(本人提供)
母が作った「おくずかけ」。宮城の郷土料理で彼岸や盆に作られることが多い(本人提供)

-最後にジュニアアスリートに食についてのアドバイスを

小中学生の時から体作りをしっかりやっておけば、ケガをしにくい体を作ることができますし、長くスポーツにも携われ、健康に過ごすこともできるようになります。子どもの頃は嫌いな食べ物、特に野菜とかで苦手なものもあるでしょうけど、食べられるものが多いほうが食事も楽しくなりますよね。私は小さい頃から、母に食事についてをサポートしてもらっていたんですが、自分自身も体に必要なんだと理解してやっていれば、より楽しく食事もできたのではないかなと思います。ですから、皆さんには楽しんで、体にいい食事をとってもらいたいと思います。

Vリーグ初勝利後、リガーレ仙台のメンバーと。後列左が佐藤選手(撮影・坂本清)
Vリーグ初勝利後、リガーレ仙台のメンバーと。後列左が佐藤選手(撮影・坂本清)

佐藤あり紗(さとう・ありさ) 1989年7月18日生まれ、宮城県仙台市出身。母と6歳上の姉の影響で、西多賀小2年でバレーボールを始める。古川学園高に進学すると、ライトプレイヤーとして春高バレーやインターハイに出場。東北福祉大で自らリベロに転向した。2012年日立リヴァーレに入社。翌年Vチャレンジリーグでサーブレシーブ賞を獲得。Vチャレンジマッチ(入れ替え戦)でプレミアリーグ昇格に大きく貢献した。2013年に全日本に招集され、11月のワールドグランドチャンピオンズカップでは、ベストリベロ賞に輝き、全日本チームの銅メダル獲得に大きく貢献した。リオ五輪世界最終予選兼アジア予選と本大会に正リベロで出場。現在は故郷に新設されたリガーレ仙台で選手兼任監督として活躍している。164センチ、52キロ。A型。