2008年北京五輪の体操女子種目別平均台で金メダル、団体・個人総合・床運動で銀メダルに輝いたショーン・ジョンソンさん(28)が、長年苦しんだ摂食障害をYouTube動画の中で告白し、「無理なダイエットをするべきではない」と警鐘を鳴らしている。

五輪出場時に16歳だったジョンソンさんは、2016年に結婚。現在は生後8カ月の娘の育児に奮闘しながら、インフルエンサーとしても活躍している。

五輪メダル獲得へ「自分は完璧主義だった」

現役時代は「自分は一流選手」というイメージを築くため、体型維持や減量の必要性を信じ、体重が増えることへの恐怖から摂食障害を患い、引退後も健康的な体に戻るまで相当苦労したという。「競技のためにこんなにも犠牲と代償を払うことになった理由の1つは、完璧主義だった自分の性格があると思う」と前置きした上で、出産、育児を通して心身ともに健康を取り戻した今、「他の誰にも、私と同じ思いをして欲しくない」と次のように自らの経験を明かした。

北京五輪翌年の2009年6月、MLBドジャース対ダイヤモンドバックスの始球式を行ったショーン・ジョンソンさん

練習中、栄養不足で何度も気を失った

3歳で体操を始めて16歳で北京五輪に出場するまで、五輪でメダルを獲得することが人生の全てだった。五輪前は1日の食事はわずか700kcalに制限し、栄養不足で練習中に何度も気を失った。

五輪を終えてトレーニングの必要がなくなった時、「食事はどのくらいの量が適切なのか、何時に目覚ましをかけて起きるべきか、運動はどの程度必要なのか」など、普通の人が送る生活の基本も分からない人間になっていた。その時、完璧な体型を維持するためなら犠牲をいとわないと考える「ボディ・イメージに関する問題」を抱えていることに初めて気が付いた。

やせなければ自分でない、世間に受け入れられない

メダルを獲得したことで目標を失って体重が6.8キロ増えた時は、この世の終わりのように感じ、元の容姿に戻すため3週間、生野菜以外は一切口にせず、ダイエット薬や向精神薬も常用するなどありとあらゆることをした。たとえ競技をしていなくても、やせることで自分が自身でいられる気がし、そうしなければ世間に受け入れてもらえないと思い込む「負のスパイラル」に陥っていった。

セラピストと栄養士の支援で心身回復へ

競技を離れた後、ジョンソンさんは健康を取り戻すために、セラピストと栄養士の支援を受けながら心身の回復に努めた。2010年に再び五輪を目指して復帰したが、過去に痛めた膝の故障が原因でロンドン五輪を目前に引退した。

しかし、結婚後は流産も経験。「自分の過去の摂食障害、自らの誤った選択のせいで赤ちゃんを失ってしまった」と自分を責め続けたが、昨年、再び妊娠したことで「真の健康」への一歩を踏み出すことができた。「赤ちゃんを守るため」、今度は逆に食べないことに恐怖を感じるようになり、娘に良い影響を与えられる母親になりたいと思ったことで、ようやく摂食障害や薬の依存から完全に立ち直ることができたのだという。

子どものために「真の健康」を取り戻す

アメリカでも体重管理が求められるアスリートやモデルら、摂食障害に悩む人は少なくない。そんな人たちに向け、ジョンソンさんは熱いメッセージを贈った。「この辛い経験があったからこそ強い母親になれ、娘にも強くなることを教えられる。今、私と同じように苦しんでいる人は友人や家族、周りの誰かに助けを求めて。完璧な人なんていない。話すことで救われるから」。

◆ショーン・ジョンソン 2008年北京五輪の体操女子種目別平均台で金メダル、団体、個人総合、種目別の床で銀メダルを獲得。その後競技を離れ、ABCテレビの社交ダンス競技番組「ダンシング・ウィズ・ザ・スター」に出演して優勝するなどタレント活動をスタート。10年にロンドン五輪出場を目指して復帰し、11年パン・アメリカン競技大会のメンバーに選ばれて団体優勝。個人でも段違い平行棒で2位になるも、10年のスキー旅行で痛めた膝の負傷が原因で12年6月に引退を表明した。16年に結婚し、現在は8カ月になる娘の母親であり、人気のインフルエンサーでもある。

【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】