高校野球岩手大会決勝は、盛岡大付が9-0で久慈に圧勝し、2年連続10度目の甲子園出場を決めた。昨夏から続く3季連続甲子園出場は県で初の快挙。今春のセンバツで創部初のベスト8入りした選手たちが、投打にパワーアップして再び、甲子園に挑む。狙うはもちろん、東北初の全国制覇だ。

岩手大会を2年連続で制した盛岡大付ナインはマウンドで喜びを爆発させる(撮影:久野明)

 「盛岡大付のセアブラ」で紹介した「清翔寮」の料理人・小野寺均さん(51)は優勝の瞬間、スタンドから選手たちの歓喜を見守った。大会中は1年生約30人分の寮の食事と、お弁当を担当。毎朝3時起きの生活が続いたが、全試合、応援に駆け付けた。

県内最多となる10回目の甲子園を決めた盛岡大付。夏の戦いを見守った「モリフ」の料理人小野寺均さん

 「ゲンを担いで、去年と同じポロシャツとズボンを着て応援しました。優勝の後、選手たちとハグしましたよ。甲子園でも“わんこそば打線”(持ち味の強力打線)を爆発させてほしいですね」と選手と一緒に喜びを分かち合った。

プロ注目の小柄なスラッガー、決勝で2発

 決勝戦で、59号、60号本塁打を連発したスラッガー、植田拓選手(3年)が注目されている。大阪・貝塚市出身の右打者で、165センチ、75キロと小柄ながら、ピンポン玉を飛ばすように打球を外野スタンドへ運ぶ。背筋力240キロ、握力72キロ、ベンチプレスは100キロを上げるパワーの持ち主。遠投120メートル、50メートル走5秒9の身体能力でプロも注目する逸材だ。

ウイニングボールをつかんだ盛岡大付・植田は歓喜の表情でマウンドへ駆け寄る。右は平松(撮影:久野明)

 そんな植田選手がこの夏、スタミナ源にしていたのは、小野寺さんお手製の「あんかけやきそば」だ。植田選手の大好物で、大会中は毎日のように食堂に来て、ライスとセットにして食べていたそうだ。

植田選手の大好物「あんかけやきそば」。油を多めに入れ、麺をパリッと焼くのがコツ。暑い日でも箸が進む絶品だ(提供写真)

 「暑くても食欲が落ちないところが大物ですね。食べる子は活躍します」と小野寺さん。植田選手に聞くと「麺類が大好きなので、小野寺さんのところにいって作ってもらっていました。外側の麺がパリッとしていておいしいんですよ。夏場も体重が落ちなかったのは、小野寺さんの料理のお陰ですね」と感謝した。

 小野寺さんに補食を御願いしていたのは、植田選手だけではない。5番打者の松田夏生捕手は、オムソバと、ライス・セアブラのセットがお気に入り。「あったかくて、辛くないみそラーメンを作って下さい」とリクエストしたこともあったそうだ。二本柱の左腕・三浦瑞樹投手(3年)は生姜焼き、右腕・平松竜也投手(3年)はウナギ。「ウナギは正直、高いので、細かく切って『ひつまぶし風』にして作りましたよ」と小野寺さんは振り返る。

昼食のつけ麺をゆでる小野寺さん。関口清治監督も麺類が大好き。小野寺さんはその日の天気や選手の気分に合わせてメニューを考えるため、献立表を作らない

 3年生は、現在生活する校内の学生寮でも食事をとるが、1年生の時に生活していた清翔寮を訪ね、小野寺さんに間食を「おねだり」するのがゲン担ぎになっている。ポケットマネーでやりくりする小野寺さんは大変だが、息子のようにかわいい選手たちからの頼み。聞かないわけがなく、困ったような顔をしながらも、うれしそうに調理に励む。選手たちにとっても、いい気分転換になっていることは間違いない。

 甲子園に出発するまでの数日間、まだまだ選手からのリクエストは続きそうだ。小野寺さんは「急な注文にも対応できるように、準備しておくつもりですよ」とほほ笑む。舞台はいよいよ甲子園。これまで2季連続でアーチを描いている植田選手は「つなぐ気持ちを忘れずに、また勝ちにつながる1発を打ちたい」と燃えている。この夏、1日でも長く3年生と過ごしたい。そんな思いを抱えながら、小野寺さんは厨房に立つ。【樫本ゆき】