世界最古の調味料ともいわれる「酢」は、日本人の味の根底にある重要な調味料です。昔は塩と酢だけで味付けしており、「塩梅」という言葉は、塩味(塩)と酸味(梅酢)の関係から生まれた言葉でもあります。食べ物を傷みにくくしたり、魚や肉などの食材の臭みを消したりと料理を助ける「陰の主役」でもあり、生薬としても重用されてきました。
また、酢には次のような健康効果も知られているので、料理に積極的に取り入れている人も多いでしょう。
酢酸菌のほとんどが捨てられている?!
酢はお酒を発酵して作られますが、そのとき活躍するのが「酢酸(さくさん)菌」です。しかし、私たちが一般的に手にする酢は、製品の安定化と見栄えのため、熟成後にろ過されてしまい、実は酢酸菌がほとんど含まれていません。大事な健康効果を発揮する酢酸菌は、濁る、沈殿するという理由で捨てられてしまっているのです。
最近、世界的に酢酸菌の研究が進み、特に免疫活性化に役立つことが分かってきました。そこで、酢酸菌を残す伝統的な製法で作られる「にごり酢」が見直され、一躍注目されるようになってきたのです。
酢酸菌の特長、他の発酵菌との違い
酢酸菌はどのような特徴を持ち、何に役立つのか、詳しく説明していきましょう。発酵と味覚の研究に従事している東京農業大学の前橋健二教授によると、「酢酸菌には乳酸菌や納豆菌にはない特別な効果がある」といいます。
グラム陰性菌の酢酸菌は2つの免疫スイッチを押す
発酵菌は、微生物学の分野で2つに分類されます。厚い細胞壁を持つのがグラム陽性菌で、代表的な菌種としては乳酸菌、納豆菌、ビフィズス菌など。酢酸菌は、薄い細胞壁を持つグラム陰性菌で、この薄い細胞壁に存在する特有成分のLPS(リポ多糖類)が免疫細胞マクロファージを活性化するとして脚光を浴びるようになってきました。
また、マクロファージの細胞表面には、感染症などの病原体の侵入を感知して免疫を作動させる「TLR(トル様受容体)」という免疫スイッチがあり、ポイントとなるのは「TLR2」と「TLR4」というスイッチ。乳酸菌や納豆菌をはじめとするグラム陽性菌が「TLR2」しか押せないのに対し、グラム陰性菌である酢酸菌は「TLR2」に加え「TLR4」と2つの免疫スイッチを押すことができるため、免疫バランスを整える上で重要な役割を果たすのです。
免疫力アップで感染症予防、花粉症症状緩和
イシハラクリニックの石原新菜副院長は、最新研究結果による酢酸菌の効果として次の5点を挙げました。
酢酸菌は、免疫の司令塔(pDC=プラズマサイトイド樹状細胞)に直接働きかけて、NK細胞などの免疫細胞を活性化させます。インフルエンザの増殖力を抑制し、鼻水、頭痛、咳などの風邪の症状も低減。さらに4週間の継続摂取によって花粉症による鼻づまりの不快感も改善されたといいます。
では、どのように酢酸菌を摂ったら良いのか、次のページで説明しましょう。