ヘモグロビンが低値で貧血と判断されたので鉄剤を飲んだが、あまり良くならない、ということがあります。その場合、鉄以外のものが足りていないことがあるのでチェックしてほしいということは、前回のコラムに書きました。今回は「鉄」に関してもう1つ注意すべき重要なことについて、お伝えします。

鉄は、炎症があると吸収が阻害されます。炎症があると、ヘプシジンという鉄の代謝を調整しているタンパク質が多くなり、体内で鉄の吸収が阻害されるのです。

アスリートは、激しいトレーニングによって炎症を抱えることが多いのですが、ケガや風邪などの体調不良がある場合は、まず治すこと。その上で、血液の状態をデータで見ながら鉄剤や鉄のサプリメントを補給していく必要があります。

慢性的な炎症がないかも確認

ケガはわかりやすい炎症ですが、それ以外に慢性的な炎症がないか、確認することも大切です。慢性炎症としては、歯周病や上咽頭炎(口呼吸の人は要注意)、腸の炎症(リーキーガット症候群やカンジダ菌の有無など)です。ケガがなく、風邪など体調不良ではない場合でも、こういった炎症があると鉄の吸収が阻害されるため、鉄剤を投与することで逆効果となることがあります。

過剰は疾患や疲労の原因に

鉄は活性酸素の発生源でもあるため、体内できちんと使われず、過剰な状態になってしまうと活性酸素が増えて、様々な疾患や疲労の原因となってしまうことがあるのです。また、安易にサプリメントや薬を使うと、胃腸障害が起こることもあります。もちろん重篤な貧血の場合は、主治医と相談して治療方針を決めていくべきですが、基本的に鉄は食事でとっていくことが大切です。

繰り返しになりますが、鉄は他の栄養素に比べて摂取方法が難しいため、安易にサプリメントなどに頼らず、まずは食事からしっかり補給していけるように心がけましょう。基本は、「エネルギーやタンパク質の不足のない食事+鉄の多い食材を意識すること」です。

今回紹介するレシピは、鉄や亜鉛の多い牛肉を使った「ゴロゴロ肉と野菜のボロネーゼ」です。コストを考えて豚肉も混ぜましたが、野菜もたっぷり摂取でき、鉄の吸収を促すビタミンCも一緒に摂れます。

鉄は、ヘム鉄(動物性食品に多い)でも非ヘム鉄(植物性食品に多い)でもビタミンCと一緒に摂取することで吸収率がアップします。今回は玄米パスタを使いましたが、パスタはお好みのもので構いません。ご飯やマッシュポテトにのせてもおいしくいただけます。ぜひお試し下さい。

管理栄養士・園部裕美