<スポーツする人の栄養・食事学/第2章 スポーツをする人はなにをどう食べたらいいのか(11)>

Q、朝食をしっかりとる時間がないときはどうしたらいいですか?

A、朝食には、寝ている間に低下する体温を上げ、体と脳にエネルギーを補給する役割があります。朝食に消化吸収のよいものを選べば、すみやかに活動のエネルギーになり、練習や運動のパフォーマンス向上にもつながります。

朝は出かけるギリギリまで寝ていたいのはやまやまですが、それで、ついつい寝坊して、朝食をとらずにあわてて家を飛び出すのが日常茶飯事という人を多く見かけます。

体温を上げ、体と脳にエネルギー補給

朝食には、寝ている間に約1℃低下するといわれる体温を上げ、体と脳にエネルギーを補給する役割があります。体温を上げるたんぱく質、血糖値を上げるグルコースやグリコーゲンのもとになる糖質、エネルギーのもとになる脂質、それらを効率よく代謝させるビタミン・ミネラル、寝ている間の発汗によって不足した水分を補給し、体を目覚めさせるのが目的です。

朝食に消化吸収のよいものを選べば、すみやかに活動のエネルギーになり、集中力が高まり、練習や運動のパフォーマンス向上にもつながります。ですから、いくら時間がないからといって、特にスポーツをする人が朝食を抜くのはもってのほかといわざるをえません。時間がないときでも、簡単につくれるお助けメニューとしておすすめしたいのは、シリアル、スープ、ドリンクの3つです。

お助けメニューはシリアル、スープ、ドリンク

シリアルは、穀類を加工して、そのままか、簡単な調理で食べられるようにしたものです。精白した燕麦を乾燥し、焙煎してひき割りにしたオートミールや、トウモロコシのひき割りを加熱してから乾燥させ、ローラーで薄くつぶしてからオーブンで焼きあげたコーンフレークなどが知られています。

いずれも、穀物をアルファー化(デンプンが水と過熱によって糊状になること。糊化。炊きたてのごはんの状態)したものなので消化がよく、体を動かすためのエネルギーになりやすいのが特徴です。

糖質、ビタミンを多く含むシリアルに、鉄を多く含むプルーンとカリウムを多く含むバナナを加え、たんぱく質やカルシウムを多く含む牛乳を注いで混ぜるだけで強力な朝食になります。

ミネストローネは、ハムやベーコン、そしてトマト、セロリ、ニンジンなどの野菜が入った、イタリアの具だくさんのスープです。そこにごはんやパスタを入れて好みでパルメザンチーズをふれば、糖質、たんぱく質、ビタミンが補給できます。料理をする人はふだんからつくり置いたものを小分けにして、料理をしない人は市販のレトルトを買い置きして活用するといいかもしれません。

手づくりのドリンク(ジュース)を飲むのもいいでしょう。ドリンク1杯で朝食1食分の栄養素は補給できませんが、新鮮な野菜や果物、牛乳・乳製品を使えば、ある程度の栄養素は摂取できます。

小松菜やクレソンといった野菜にヨーグルトを加えたベジヨーグルトドリンク、ニンジンにマーマレードを加えたキャロットジュース、牛乳とバナナに練り白ゴマを加えたバナナゴマジュースなどなど、ミキサーにかける時間もないのでしたら、果実酢を水で薄めるだけのビネガードリンクなど、自分でいろいろ工夫ができます。

ミキサーやブレンダーにかける時間はできるだけ短くして、つくったらすぐに飲むのがポイントです。自分でつくるのが面倒でしたら、市販の野菜ジュースでもかまいません。なにもおなかに入れないよりは、ずっとマシです。

(つづく)