人工甘味料は甘みが強く低カロリーなため、「カロリーオフ」や「ゼロカロリー」などと表示されている商品に使用され、ダイエットの味方として世界中の人に利用されています。しかし最近、世界保健機関(WHO)は、非糖質系人工甘味料は減量に役立たないばかりか、長期使用による健康被害をもたらす可能性を示唆し、使用しないよう勧告しました。

WHOが5月15日に発表したのは、非糖質系人工甘味料(アセスルファムK、アスパルテーム、アドバンタム、シクラメート、サッカリン、スクラロース、ステビア、ステビア誘導体など)に関する新しいガイドライン(※)。これらの甘味料は食品添加物で、砂糖の数百倍から数千倍も甘味度が強いものです。

体重管理や減量効果を疑問視

その中でWHOは、「糖類を非糖質系人工甘味料に置き換えても、体重管理や体脂肪を減らすのに役立たない可能性が高い」と減量効果を完全に疑問視。「むしろ、長期的な非糖質系人工甘味料の使用は、2型糖尿病、心血管疾患、成人の死亡率のリスクの増加など望ましくない影響を及ぼす恐れがある」と使用することのデメリットを示唆しています。

非糖質系人工甘味料の短期間の使用では、空腹時血糖、空腹時インスリン、血中脂質などで健康被害のリスク増加の影響は示されず、小児も含め体脂肪低下の報告もありました。対して、長期間継続の研究結果では、非糖質系人工甘味料の使用と体脂肪の測定値との間に有意な関連性は示されなかったため、今回の「役立たない」という見解に至っています。

子どもの頃から甘い食べ物を減らせ

さらにWHOは、「健康を改善するためには果物や天然に糖を含む食材を利用することで、砂糖などの糖類の摂取量を減らすため、子どもの頃から甘みを減らす努力をすべき」と、味覚発達段階の幼少時からの食事、味付けの重要性にまで触れました。

ここで注意したいことは、非糖質系人工甘味料以外の甘味料、例えば、オリゴ糖や糖アルコールの使用を推奨しているのではなく、「食材中の甘さは利用しても良いが、子供の頃から甘い味つけを減らすこと」を推奨しているということです。このガイドラインが示す糖類には、はちみつやメープルシロップなども含まれるので、天然の糖類だから摂取しても良いということではないのです。

素材の甘味を生かした味付けや調理を

「甘い=エネルギー源」として、また乳児期からも甘みをつけるとよく食べるというメリットもありますが、甘味は嗜好性が高いため、離乳食の段階から甘くない味付けに慣れさせることも大切です。甘いもの好きに育ってしまった大人にとって、これから味覚を変えるのは厳しいものですが、健康のため、果物を利用したり、最小限の加工で素材の味を生かした甘さや薄味に慣れるよう意識していきましょう。

日本食は甘辛い味が多いため、砂糖やみりんの使用量を減らすと食塩やしょうゆの使用量も減ります。薄味にすることでご飯の摂取量が減り、脂っこい料理も合わなくなり、淡白な食事を好むようになる可能性もあります。その結果、摂取エネルギーが減り、体重や体脂肪を減らすことができるかもしれませんね。

なお、今回のWHOのガイドラインが示した非糖質系人工甘味料には歯磨き粉、スキンクリーム、医薬品などのスキンケアや衛生製品、またはオリゴ糖および糖アルコール(エリスリトール、キシリトールなど)は含まれていません。

※WHO「Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline」(https://www.who.int/publications/i/item/9789240073616

管理栄養士・今井久美

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