減量トレーニングによって「体のキレが増す」。これまでプロボクサーの間などで経験的に言われてきた現象が科学的根拠のあるものだと群馬大などの研究グループが確認し、このたび発表した。試合前の減量とトレーニングによって、脳内の運動に関する連絡路が増強されたことがMRI(磁気共鳴画像化装置)検査によって明らかになったと報告した。

研究対象となったのは、平均14.4試合を経験している20代のプロボクサー21人。試合前の1カ月間で平均4キロという無理のない範囲での減量を行ったボクサーに対し、試合1カ月前、試合直前、試合1カ月後と長期にわたり、脳MRI画像撮影による追跡調査を行った。

この結果、脳内で運動・動作の学習と習熟に関係している運動回路のうち、競技に必要とする動作を繰り返し練習すればするほど強まる線条体被殻(Putamen)から第一運動野(M1)の連絡路が、試合1カ月前から試合直前にかけて増強。一方で、試合1カ月後には元の状態に戻っていくことから減量とも関係があると結論づけた。

プロボクサーにおける被殻から第一運動野に至る運動回路の増強を示した画像。群馬大学医学部附属病院の広報より引用 (https://hospital.med.gunma-u.ac.jp/?p=12911)

この研究リーダーの群馬大学医学部附属病院麻酔科蘇生科の荻野祐一講師は「試合に向けて1カ月間の追い込んだ減量+トレーニングによって、この構造的つながりが出てくる」と説明。さらに「減量+トレーニング」の成果はプロボクサーだけでなく、「試合前に減量を行う全てのアスリートに当てはまると考えていい」と、これまで経験的に「体のキレが増す」と言われてきた試合前の減量トレーニングに、初めて科学的根拠を示すものだとした。

被殻から第一運動野に伸びる運動回路を増強する白質線維数の推移図。群馬大学医学部附属病院の広報より引用 (https://hospital.med.gunma-u.ac.jp/?p=12911)

その上で、荻野講師は減量の期間ややり方によって成果が変わるとも言及。「『構造的なつながりの増強』は1カ月にわたる持続的な減量とトレーニングの効果で、数日間で出来上がるものではない。減量は精神面の負荷(特に空腹感)も大きいため、長期間の減量期ではパフォーマンスが落ちて、今回示したような結果は見いだせない。急激な減量は試合におけるパフォーマンスの低下や健康への害につながるので避けるべき」との見解を述べた。

試合前の減量トレーニングを効果的に行い、パフォーマンスをアップさせるには、体に無理な負荷をかけず、計画的に行うことが重要だ。また、この成果は年代に関係なく見られるというが、成長期のジュニアアスリートの減量は一層、慎重に行う必要がある。