<思いよ届け! 特別の冬(3)>

第100回全国高校ラグビー大会は、27日に東大阪市の花園ラグビー場で開幕する。コロナ禍の影響で無観客開催となり、家族も会場では観戦ができない。日刊スポーツでは「思いよ届け! 特別の冬」と題して、西日本の注目校を紹介する。

母と姉への感謝の思い力に

39大会連続出場の佐賀工(佐賀)でキッカーも務めるSO徳永優太副将(3年)は、肺血腫で闘病する姉優瞳美(ゆめみ)さん(22)と、女手1人で育ててくれた母正子さん(48)へ感謝の思いを込める。

「姉も母も活躍することが一番うれしいと思う。恩返しできるよう頑張りたい。(姉の病気が)早く治ることを願っています」

全国大会へ気合を込める佐賀工SO徳永優太(撮影・菊川光一)
全国大会へ気合を込める佐賀工SO徳永優太(撮影・菊川光一)

姉は中学の頃から、熊本の自宅から通院していた。高2の夏になり、母から「肺血腫だからラグビーで元気づけてあげて」と伝えられた。長く伏せられていた事実だったが、より家族の絆は深まった。今年に入って、姉の病状が悪化。コロナ禍で熊本県内には受け入れ先がなく、設備が整う栃木県の病院に入院することになった。

母は70代の祖母と一緒に毎週末、熊本から佐賀まで練習見学に駆けつけてくれた。9月からの入院を機に、母は遠い栃木で看病を続けており、3カ月以上会えていない。最近、電話で「姉を元気づけてあげて」と激励された。大会は無観客だが「見て欲しかったです。心残りだけどしょうがない。映像で分かるようにしたい」とプレーで思いを伝えようと、覚悟を決めた。

キック練習を行う佐賀工SO徳永優太(撮影・菊川光一)
キック練習を行う佐賀工SO徳永優太(撮影・菊川光一)

中学の頃、母は老人介護の仕事をしながら車で送迎してくれた。毎日、深夜まで家族のために働いてくれた姿は、忘れない。中学2年になると、資金を集め、ニュージーランドでのラグビー短期留学もかなえてくれた。来春、日大に進学予定で将来は「トップリーグに行きたい」という夢もある。

花園では27日の1回戦で大津緑洋(山口)と対戦。勝てば30日の2回戦で、シード校の東海大大阪仰星(大阪第1)が待つ。「勝つことが一番。感謝の気持ちで結果を残す」。家族愛を力に、全力を尽くす。【菊川光一】

◆佐賀工 1898年(明31)設立の男女共学県立校。機械科、電気科、情報システム科、建築科などに758人(女子42人)が学ぶ。ラグビー部の創部は1944年。全国高校大会は準優勝1回、4強1回、8強11回。ラグビー部の主なOBは五郎丸歩、山村亮(ヤマハ発動機)ら。部員61人。

◆徳永優太(とくなが・ゆうた)2002年(平14)12月19日、熊本市生まれ。帯山小ではサッカー、空手、水泳を経験。ラグビーは帯山中ラグビー部で1年途中から始める。佐賀工出身のSH田上稔(ヤマハ発動機)が同じ中学OBの縁で進学。高2のワールドユースからFBでレギュラー。3年からSOで副将。高2でU-17九州代表。50メートル走6秒1。175センチ、79キロ。血液型AB。家族は母、祖母、姉。

(2020年12月24日、ニッカンスポーツ・コム掲載)