「食欲が落ちている」「胃の不快感」「腹痛や下痢」「腸の調子が悪い」という状態は、選手のコンディション調整の上で見逃せない課題です。こういった時は、まず原因を探り、対処方法を決め、それに合わせた食事や栄養補給を選択していきます。

今回は、胃や腸の具合が悪いときの食事としておすすめの食品を紹介します。

食欲が落ちたとき

「食欲が落ちた」ときは、食欲を増進させる工夫をしましょう。

香辛料

効果:香辛料に含まれる辛み成分が、食品の風味に変化を与えて食欲増進をもたらします。
食品例:コショウ、ショウガ、唐辛子、マスタード、ワサビ、山椒など
注意点:唐辛子の辛み成分は食べ過ぎると粘膜を傷つけて胃が荒れる原因になるので、注意してください。

暖色系の食品

効果:食べ物の色は食欲に影響すると言われており、食欲増進させる色としては赤、オレンジ、黄色といった暖色系がおすすめです。
食品例
=トマト、赤パプリカ、マグロ、梅干し、紅ショウガ、イチゴ、リンゴ
オレンジ=ニンジン、エビ、サケ、オレンジ、カボチャ
=サツマイモ、黄パプリカ、コーン、バナナ
注意点:逆に、食欲を減退させる色として寒色系(青、紫)や無彩色(茶、黒)があります。青が基調の部屋や暗い照明の中で食べるのも食欲を減退させるので、食べる環境も明るい雰囲気をつくるとよいですね。

胃の不快感があるとき

食べると、胃がむかむかするといったような「胃の不快感」があるときは、消化の良いもの、消化を促進するものをとりましょう。

消化酵素を含む食品

効果:胃では胃酸の分泌と、でんぷん分解酵素(アミラーゼ)やタンパク質分解酵素(ペプシノーゲン)によって食物が分解され、腸に送り出されます。消化酵素を含む食品をとることで胃での消化の負担を減らすことにつながります。また、よく噛んで食べると唾液のでんぷん分解酵素で消化を促進します。
食品例
でんぷん分解酵素=大根(おろして加熱せずにとる)
タンパク異質分解酵素=グリーンキウイ、パイン、青パパイヤ、梨(生で食べるほか、肉などに漬け込んだり一緒に調理したりすると柔らかくなる)

腸の調子が悪いとき

「腸の調子が悪い」ときは腸内環境が乱れている場合が多いので、整える食品をとりましょう。

発酵食品

効果:ストレスや偏食などにより腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスが崩れると便秘や下痢、慢性的な体の不調などに影響してしまうと言われています。バランスを整えるために善玉菌となる発酵食品をとりましょう。
食品例:ヨーグルト、納豆、キムチ、ぬか漬け
調味料=みそ、しょうゆ、酢、豆板醤
飲料=甘酒、乳酸菌飲料

胃や腸の調子が思わしくなく、食べても栄養を上手に取り入れられなければ、疲労回復も遅れてコンディションの改善にも時間がかかってしまいます。悪くなってから対策することももちろん大事なことですが、悪くならないように事前に対策することも大切です。

疲れた時や大会や合宿で忙しくなる時期は、どうしても胃腸を崩しやすくなります。今回紹介した食品は「ちょい足し」や「プラス1品」としても活用できるので、対策としても予防としても、ぜひ日頃から食事に取り入れてみてください。

今回紹介するレシピは「冷めても柔らか!おろし餅」です。大根おろしに含まれているでんぷん分解酵素で餅が柔らかくなり、冷めても硬くなりません。補食やおやつとして作っておくのもおすすめです。

餅は消化も良く、糖質を多く含む食品なのでアスリートには強い味方の食品。正月に余っているお餅があれば、早速作ってみてください。正月だけでなく、年間通じてお餅を取り入れるようにするとベターです。

KAGOSHIMA食×スポーツ/管理栄養士・田畑綾美