近年、学校単位の部活動ではなく、地域のクラブチームでスポーツ活動をすることが増えてきています。クラブチームには比較的広範囲の地区から活動に参加する選手がいるため、平日の練習時間は18~19時以降になり、その結果、夕食の時間も遅くなる傾向があります。「食事時間が遅くなる」とお悩みの保護者の方も多いことでしょう。

夜遅い時間の食事のデメリットとしては、(1)睡眠の質の低下(2)翌朝の食欲低下などがあります。成長期は睡眠中にしっかり成長ホルモンを分泌させ、朝食で栄養源を十分に確保したいところですので、クラブチームの活動が週の大部分を占めるならば、毎日のように夕食が遅くなり、その影響も大きくなるため、対策が重要です。

練習の前後で夕食を分けて食べる方法

そこで、夜遅くなる時の食事対策としておすすめするのが「分食(分割食)」です。通常の夕食で食べる内容を「練習の前または直後」と「帰宅後」に分けて食べる方法です。

分食の考え方
分食の考え方

いわゆる「補食」との違いは、考え方やとり方にあります。補食は、食事で足りない栄養を補う目的で「食事にプラス」して食べることで、分食は「食事を分けて」食べるということ。結果的に内容は同じになることもありますが、今回は「夕食の分食」として、話を進めていきます。

分食にするなら、いつ、何をとったらいいのか、メニューとポイントを紹介しましょう。

練習の前、または直後のメニューとポイント

必要な栄養素

・エネルギー源(炭水化物)=主食
・タンパク質=主菜(少量)

メニュー例

・炭水化物=サケおにぎり、親子丼、ミートソースパスタ、月見うどん

ポイント

(1)練習前にとる目的=質の高い練習をするため

夜の練習となると、昼食から時間がたっているのでエネルギーが不足している可能性があります。エネルギー不足の状態で練習すると、集中力が切れて練習の質が低下したり、筋肉など体内のタンパク質がエネルギーとして利用(分解)されて、疲労蓄積や回復の遅れにつながったりします。練習前には炭水化物をしっかりとっておきましょう。

学校から1度帰宅してから練習に行く場合は自宅で食べられますが、そうではない場合は、コンビニなどで必要なものを調達するか、前もって練習道具と一緒に準備しておくといいでしょう。

(2)練習直後にとる目的=疲労回復

練習後すぐに炭水化物をとることで、急速な疲労回復につながります。日々の疲れは日々とることが疲労の蓄積を防ぎ、次の質の高い練習につながります。

一方、炭水化物をとるタイミングが寝る直前になると、血糖値が上昇して睡眠の質の低下につながり、回復にも影響してしまいます。練習後のできるだけ早いタイミングでとることで、睡眠の質への影響も減らしましょう。

練習直後の分食は、練習前に自分で用意しておくか、家族の送迎がある場合は、家族に持ってきてもらうとよいでしょう。

帰宅後のメニューとポイント

必要な栄養素

ビタミン、ミネラルなど
・消化に良いおかず
・野菜、海藻、キノコなどの副菜
・ヨーグルト、牛乳(消化に良いタンパク質)
・果物

調理法・メニュー例

・茹でる(豚しゃぶ)、蒸す(蒸し鶏)、焼く(白身魚のホイル焼き)、炒める(肉野菜炒め)

ポイント

消化に悪いメニューは睡眠の質に影響を与えます。油を使用する調理法や脂質が多い食材を使用したメニューはできるだけ少なくして、よく噛んで食べて消化を促しましょう。

夕食は1日の中で一番比重が大きい食事ですので、とり方次第で成長に影響します。1日に必要なエネルギーや栄養素を確保するためには朝からしっかり食べること、夜は分食で上手にとること、さらに休日は平日の分をカバーできるように量と質の両方を重視してとることで、健やかな成長につなげましょう。

今回紹介するレシピは、練習前の食事としてもおすすめの「サンラータン風さっぱりうどん」です。お酢の酸味でさっぱり食べられるので、これから暑くなり、食欲が落ちる時期にもおすすめです。

ラー油やゴマ油を足すことで食欲増進にもつながります。お好みでお酢の量を調整したりレモンや梅干しなどの酸味に置き換えたりすると違った味わいでいただけます。

KAGOSHIMA食×スポーツ/管理栄養士・田畑綾美