小中学生の保護者の方々に、子どもの食事についてお悩みを聞くと、必ずあるのが「野菜を食べない」「好き嫌いが多い」というものです。

ある小学生たちの食事風景から

3月末に行った合宿で、小学生十数人の団体と居合わせました。昼食時間がほとんど同じだったため、食事の様子が自然と目に入りました。

上級生と思われる女の子は完食していましたが、低学年と思われる男の子のほとんどが、ほんのわずかな量の野菜サラダに箸をつけていませんでした。「おやおや」と思った私は席を立ち、自分のクラブの選手に呼びかけるようにしつつ、わざとその子たちに聞こえるように「嫌いでも野菜は食べてるかな~。好き嫌いなく食べれば大きくなるし…」と言いました。

その時点で、私のクラブの選手たちはそれが自分たちにではなく、隣の小学生に向けられているとわかったようでした。なぜなら、私のクラブの選手はほとんど全員がサラダを完食していたからです。

すると、私の近くにいた男の子が「本当? ねえねえ…」と質問してきたので、「ちゃんと好き嫌いなく食事をして、野菜も食べるとね…」と話していると、そこにいた小学生がみんな前のめりに質問を浴びせてきました。気が付けば、残していたレタスとトマトのサラダは完食とまではいかなかったものの、わずかに残るだけとなっていました。

食べるものが全て好きではない

「嫌いでも食べよう」と私は言います。我々大人でも、食べられるものが全て大好きなわけではありません。私たちが口に運ぶ食べ物には「大好き」から「食べられる」まで嗜好のグラデーションがあります。

別に嫌いなものを大好きにする必要はなく、食べられるようにすることが大切だと考えています。嗜好が固まる前の子どもたちなら、食べられるものの幅は広げられます。   今回は生野菜だったので、味付けや調理法をいつもと変えたわけではなく、苦手でも頑張って食べたのでしょう。その「食べられた」という実感があると、その後はかなり抵抗がなくなります。最終日は、みんな野菜を残さず食べていたのだから驚きです。子どもは日々成長すると改めて感じました。子どもは可能性の塊です。

今回は「春ゴボウとソーセージのケチャップ炒め」を紹介します。ゴボウを和風の味付けにせず、子どもの好きなソーセージとケチャップを合わせました。ゴボウはなるべく薄く切ると食べやすくなります。

ゴボウの特徴は食物繊維がとても多いことです。カリウム、葉酸も含まれ、少量ですがビタミンB群、亜鉛、鉄分もあります。ゴボウに含まれる不溶性の食物繊維は水に溶けにくいため、便のかさを多くし、腸のぜん動運動を活発にして便通をよくします。ジュニアの頃から排便のリズムがきちんとできていくことも、良いコンディションを保つには大切です。

春ゴボウとソーセージのケチャップ炒め」を「嫌いでも食べる」ではなく、「抵抗なく食べられる」ようになってもらえたらなと思っています。

管理栄養士・月野和美砂