<イップスって何?(7)>

スマートフォンを設置した三脚は、バランスよく立っています。イップスに悩む大学生のA君を前にして、トレーニングサポート研究所の松尾明氏(48)は、三脚を指して言いました。

「もし足の位置が変わって重心がずれていたら倒れてしまう。A君は、そんな状態で投げていないかな。今のフォームは重心がずれた状態で投げてきた結果だよ。腕の動きは結果であって原因ではないんだよ」

キャッチボールでも、松尾氏は腕の動きを指導しません。「ボールコントロールはボディーコントロール。体幹がしっかりしていれば、腕は自然と機能的に動く」「腕は放っておいていい。勝手に動く」と、主に重心を助言していました。

同氏は「イップスは『心の病』ではない」と断言します。文献などで学び「過度な動作の繰り返しで神経が興奮しすぎてしまい、複数の動きが重なってしまう」と解釈しています。

A君の場合も、同氏は「彼は中学時代に肩を痛め、復帰後に違和感があったと言う。そこから修正を重ねるうちに、動きのオーバーラップが始まったのでしょう」と言います。

「野球に対する意識が高い選手は、違和感を直そうと躍起になる。腕、肘、手首など部分的な修正を重ねるうちに、本来の動きが崩れてしまいます」。修正…つまり練習がイップスを招いてしまうのでしょうか?【飯島智則】