<イップスって何?(5)>

意識と無意識の差が生み出すイップスは、反復練習だけで克服できません。では、いかに対処すればいいのでしょうか。

さまざまな理論や方法があり、すべてを紹介することはできません。2人の専門家に登場してもらいます。まずはトレーニングサポート研究所の松尾明氏(48)。大学生を指導する場面を見せてもらいました。

大学生のA君は、高校時代に甲子園にも出場した強肩の外野手でした。しかし、練習でボール回しをしている際に悪送球してしまい、チームに迷惑をかけてしまいました。1つでもミスが出たらやり直しというルールでした。A君は「それから投げるのが怖くなってしまいました」と言います。

「バックホームとか、1人で投げる場合はいいんです。割り切っていけるから。でも、カットマンに返すのが怖かった。もう試合に出たくないとさえ思いました。試合中は、打球が飛んでこないで欲しいと願っていました」

高校時代を何とか乗り切り、大学に入学した直後は調子がよかったそうです。しかし、ある時に拾った球を近くにいるチームメートへ投げた…つもりだったのが、目の前に転がっていました。「地面にたたきつけてしまった感じです。ショックでした。さすがに『このままじゃダメだ』と思いました」。仲間の紹介で、松尾氏の元を訪れました。【飯島智則】