<イップスって何?(1)>

 ボールを投げる時、腕がすんなり上がっていかない。何かに引っ掛かったようにギクシャクする。そんな投球フォームを見たことはありませんか? もしかすると「イップス」と呼ばれる症状かもしれません。

 イップスの症状はさまざまで、投げる際に腕が縮こまる。指から球が離れず、たたきつける。ひどい場合は、投げる際に手が頭に当たってしまうといいます。

 本人はそんな動きをするつもりはありません。スムーズに動こうとしても、なぜか意図と違う動きになってしまいます。できていた動きができない。思うように動けない選手は、とても悩み、苦しみます。

 イップスの歴史は古く、1930年代にプロゴルファーのトミー・アーマーが、緊張するパッティングで手のけいれんなどが出るようになり、引退を余儀なくされました。アーマー自身が、のちに自分に起きた現象を「イップス」と表現しました。語源は「yip(イップ)=小犬がキャンキャン叫ぶ」と言われます。

 今年1月、10年ぶりに改訂された岩波書店の広辞苑にも「朝ドラ」「いらっと」「自撮り」などと共に新語として加わりました。アーマーの時代から、約90年の時を経て日本で一般化されたと言えます。

 この連載では、スポーツ選手を悩ませるイップスを検証します。【飯島智則】