<健康診断の数値の見方>

血液検査から様々な病気のほか、栄養状態も分かります。今回は、腎機能の指標から栄養状態を評価します。

腎臓は血液中の老廃物を濾過(ろか)し、不要なものは尿に排泄、必要なものは再吸収します。赤血球をつくるホルモンであるエリスロポエチンを分泌したり、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを活性化したり、貧血や骨密度にも関係の深い臓器です(基準値は検査機関によって異なります)。

尿比重

基準値:1.015~1.025

尿比重が高くなると、尿が濃くなる、つまり脱水を表します。1.030以上になると脱水、熱中症が危惧されます。腎機能低下(腎不全など)では低くなります。

尿素窒素(BUN)

基準値:8~20mg/dl

尿素窒素とはタンパク質の燃えカスで、老廃物として尿から排泄されます。タンパク質の摂取量が少なければ低値になりますが、タンパク質の摂取量が多い場合や老廃物を排泄する腎臓の機能低下によって高値になることがあります。

また、尿路結石や腫瘍など、尿路に通過をさえぎるものができて排泄を邪魔する場合や、消化管出血や筋肉の破壊により、尿素窒素が作られ過ぎた場合も高値になります。つまり、プロテインの飲み過ぎや筋トレのし過ぎでも上がります。消化管出血や筋肉の破壊の場合は、クレアチニンは上昇しません。

血清クレアチニン

筋肉量を評価する方法、健康診断でも分かるクレアチニンの数値」の記事を参考にしてください。

BUN/クレアチ二ン比

基準値:8~15

通常は10前後ですが、タンパク質の摂取過剰の場合や、タンパク質がエネルギーとして使われた時(異化亢進)に上昇します。特に20以上の時は、タンパク質は摂れているものの、エネルギー不足(糖質、脂質不足)で異化亢進が進んでいることを表します。運動前後は糖質や脂質も摂り、摂取エネルギーを増やしましょう。

クレアチニン・クリアランス

基準値:100~120ml/分

腎臓が1分間にクレアチニンを含む老廃物を濾過できる量を表します。腎臓の糸球体が濾過する元の尿(原尿)の量とほぼ同じです。糸球体腎炎、腎硬化症など腎臓の機能低下だけでなく、尿路結石などで尿路障害が起きた場合も低下します。

推算糸球体濾過量(eGFR)

基準値:90以上

腎臓がどれくらい老廃物を尿へ排泄できるかを示すもので、腎機能低下の場合、低くなります。血清クレアチン(CRE)値をもとに、年齢、性別から算出します。

尿酸(UA)

基準値:男性 3.0~7.0mg/dl、女性 2.6~6.5mg/dl

尿酸はプリン体が分解された時にできる老廃物で、プリン体の摂取過剰、腎機能低下による尿酸排泄不良により高値になります。プリン体の摂取量が多くなくても、細胞が壊れることでも上昇するため、急激な減量や筋トレなどによる筋肉破壊でも上昇します。

尿酸値が高くなると、関節に結晶化し、痛風発作を起こす可能性が高まります。尿酸の排泄を促すために積極的に水分を摂りましょう。

このように腎機能の数値は、食事や運動によっても数値が変わる指標が多いですね。生活習慣病予防の観点だけでなく、日頃の食事や運動の評価にも活用してください。

【管理栄養士・今井久美】