とろみの原理はでんぷんの「糊化」

次にでんぷんの特徴、とろみについて説明していきます。わらび餅の粉に含まれているでんぷんは、水に混ぜて火にかけると粘りが増して糊状になります。さらに火を加えると、透明な糊に変化していきます(糊化)。

でんぷんの粒は、炊飯時の米と同じように水を吸って膨張します。膨張し続けると崩れて水に溶け出し、粒同士で網目のように絡み合うことで、とろみが生まれるのです。糊化が進むと粘りが出て、透明度も高くなります。

ただ、一度とろみがつきながら、次第にサラサラになることがあります。でんぷん粒が最大に膨らんだ後も加熱を続けると、粒が潰れたり、部分的に壊れたり解けたりして、とろみが失われていくからです。

片栗粉を水で溶いておく理由

料理にとろみをつけるのは片栗粉。片栗粉も元々、カタクリの根のでんぷんを使っていたものの、希少になったため、今はジャガイモでんぷん100%のものがほとんどです。

その片栗粉を、麻婆豆腐やあんかけなどに入れたところ、ダマができたことはありませんか? その理由は、片栗粉が鍋の煮汁などに溶け込んで混ざる前に、65℃以上の熱ででんぷんの糊化が始まり、部分的に粘度が上がって固まってしまったからです。

それを防ぐために、片栗粉は水に溶き、火力を弱めてから入れます。あらかじめ溶かしておくことで煮汁に広がりやすいのと、温度を下げる意味もあります。また、片栗粉は沈みやすいので、鍋に入れたらすぐにしっかりと混ぜるのがダマを作らないコツです。

<片栗粉のとろみをダマにしないコツ>

(1)片栗粉:水=1:1 で事前に水で溶いておく。
(2)弱火から中火にしてじっくりとかき混ぜる。
(3)粘り気が出てきた後(60℃)も、ふつふつと小さい泡が出て煮立ってくるまで、しっかりと加熱する。でんぷん粒が吸水できる最大値まで膨張させて、しっかりと粒の破壊・分散を起こさせることで、冷ましてもしっかりととろみが付いたままの状態にできる。

コーンスターチは片栗粉の代用になるか

でんぷんの原料が違えば、粒形、糊化する時の特性も異なります。ジャガイモでんぷんは糊化した時の粘りが大きく、透明度が高く、付着性も大きいのでとろみやあんかけに使われます。一方、コーンスターチは糊化した後も白く濁り、硬く固まりやすくベタベタしません。そのため、白い牛乳の入ったカスタードクリームなどに使われます。

片栗粉が家にない時、コーンスターチを代用できますが、固まる温度が高い(片栗粉が60℃に対してコーンスターチは80~90℃)、白くなり、あまり透き通らないという違いがあることを覚えておきましょう。

とろみをつける様々な効果

あんかけのように食べやすく、舌触りを良くするほかにもとろみの効果はあります。汁物にとろみをつけることで保温性が高まったり、舌に味がまとまりつくため薄味でも味が濃く感じるメリットがあります。

くず汁やあんは、透明度が高いことで料理がよりおいしそうに感じられます。かき玉汁は、とろみをつけた汁に卵を入れることでふわっとした卵が出来上がります。また、離乳食や高齢者食用のとろみをつける素、加工でんぷんは120~220℃で一度加熱しているデキストリンの状態のため、水にすぐ溶けてさっととろみをつけることができます。

たかがでんぷん、されどでんぷん。原料によって食感や粘りが違うのは面白いですよね。最後に、自宅で簡単に作れる片栗粉を使ったわらび餅の作り方を紹介します。製菓店などで本わらび粉を手に入れた時は作り比べして、その味わいを感じてみてはいかがでしょうか。

作ってみよう!家庭で簡単わらび餅

<材料>
・わらび餅粉(片栗粉)=100g
・砂糖=50g(お好みで100gまで)
・水=250cc

<作り方>
(1)材料を鍋の中に入れてしっかりと混ぜる
(2)弱火にかけて焦がさないようによくかき混ぜる
(3)粘りがでてきたら弱火にして透明になるまで混ぜ続ける(4~5分)
(4)水の強いたバットや保存容器にのせて、熱がとれたら出来上がり

冷やし固めるときに、手の上にラップを敷き、わらび餅の生地、あんこ、わらび餅と上から重ねてラップをねじると水まんじゅうになります。なお、葛粉100%で作られるのが葛桜、葛粉をベースに片栗粉などのわらび餅粉を入れたのが水まんじゅうと呼ばれているそうです。