新年度がスタートして1カ月が過ぎました。クラス、部活などでそれぞれ新しい出会いがあり、少しずつコミュニケーションが深まってきている時期でしょうか。子どもだけでなく、保護者も新しい出会いがあったことと思います。

中には、初めて食物アレルギーの子どもをもつ保護者と接する機会があった方もいるでしょう。なんらかの食物アレルギーをもつ子どもは増加傾向です。子どもがいる20代~40代の女性のうち約2割の家庭で、家族の誰かが食物アレルギーを持っており、その内訳の半数以上が「0歳から中学生までの子ども」という調査結果(※)があります。しかし、家族に食物アレルギー患者がいないと、その症状や工夫、食事管理を理解したり、想像したりするのが難しいでしょう。

今回は、食物アレルギーの子どもを持つ保護者が日頃、どのような気持ちで過ごしているのか、今後のお付き合いのヒントになりそうなエピソードを紹介します。

心理的ストレスが多い保護者の声

研究報告を見聞きし、私たちの経験も踏まえると、食物アレルギーの子どもをもつ保護者は、食物アレルギーのない子どもの保護者よりも厳重に食事を管理する必要があることから、相対的に心理的苦痛が高い傾向にあります。成長発達に重要な「食事」に関連する疾病であり、昼間や宿泊行事では子どもの食行動が見えないことからストレスも多いと聞きます。除去食品が増えると、比例して不安感や恐怖心なども強くなる傾向もあります。

そんな保護者の声の一部を紹介しましょう。

除去食品が多いと、栄養が偏らないだろうか
自分の子どものアレルゲンは、原材料に確実に入っていないかどうか
保護者のいない環境で、子どもは十分に管理ができているか
医師から「解除」して良いと指示が出ても、アレルギー症状が出てしまわないか

家族に重度の食物アレルギー患者がいると、コンタミ(アレルゲンが料理や食品に混入)防止の観点から、医師から除去指示が出されている食品を、他の家族も一緒に除去しているケースもあります。除去が解除になっても、保護者自身がアレルギー体質だと「(大人になってからの発症も聞くので)自分が食物アレルギーになってしまうのではないか」「医師から食べても大丈夫と言われたが、怖い」「子どもが解除していく食品の分量を間違えずに計れるだろうか」など、別の心配が生じるようです。

同じ境遇の仲間や周囲のサポートが不可欠

そういった心配や不安解消のアドバイスとして、かかりつけの医療機関から「解除」を指示された食品は、医療機関から離れた自宅ではなく、医療機関に近い駐車場や徒歩で移動できる近隣で食べたり、安心して食べられる場所を医師と相談したりするよう伝えています。実際に、食物アレルギーの子どもを育ててきた保護者同士の交流や意見交換も、支えの1つになるとも聞いています。

一概に「食物アレルギーをもつ子ども」と言っても、それぞれの症状や除去食品の事情も異なります。様々な葛藤を乗り越えて食べられるようになるまでは、何よりも周囲の温かいサポートが必要不可欠です。自分の子どもや家族に食物アレルギーやアレルギー疾患がいなくても、そういった方たちへの配慮や思いやる気持ちが相互理解につながります。もし、そういった保護者の方と触れあう機会があったら、このコラムの内容を思い出していただけると幸いです。

さて、今回紹介するのは「春野菜たっぷりアスパラガスと豚肉のオイスターソース炒め」です。オイスターソースはその名の通り、原材料はカキのため、中濃ソースよりも亜鉛、マグネシウム、ビタミンB12などの栄養素が多く含まれています。ただし、中には小麦や大豆が含まれている商品もありますので、原材料の確認には十分注意しましょう。

アスパラガスには、抗酸化作用の高いグルタチオン、βカロテン、葉酸が豊富に含まれています。葉酸は、造血作用があるため貧血予防にもつながる栄養素の1つです。

新緑の美しい5月をイメージしながら材料を組み合わせることで、抗酸化対策となる料理になりますね。

※小児食物アレルギーに関する基礎調査 日本財団

管理栄養士・乳井美和子、小高鏡子